2023年12月20日

アデノウイルス感染症

 アデノウイルス感染症が本年9月以来、主に乳幼児の間で流行しています。過去10年間で最大規模です。今回のコラムでアデノウイルスについて解説いたします。

 アデノウイルスには51の血清型があります。種類が多いため、様々な部位に感染し、様々な病型があり、一度のみならず二度、三度と感染します。いずれのウイルスも、便や飛沫や直接接触により感染します。コロナ禍の3年間、流行が抑えられていたことから、手洗いやマスクは感染防止に有効と考えられます。ウイルスを受け取ってから症状が現れるまでの潜伏期間は57日です。

2023年9月24日

インフルエンザの大規模流行に警戒を

 インフルエンザが異例の早さで流行入りしました。2023年第37週(91117日)時点で、神奈川県における1医療機関あたり1週間のインフルエンザ患者数は9.37人です。流行入りの目安が週間に1人、注意報レベルが週間に10人、警報レベルが週間に30人ですので、注意報レベルまであと一歩のところまで来ています。当院でも8月最終週から感染者が徐々に増え始め、直近の第38週(91824日)の1週間で注意報レベルを大きく超えました。大和市域の複数の小中学校と高校で集団感染が発生しています。今後いっそうの警戒が必要です。

2023年5月31日

咳止めシール? 一発で効く薬?

 今回は薬に関するコラムです。誤解・誤用されがちな薬二点について解説いたします。

[1] 咳止めシール?

 風邪をひいて咳をしている子どもの親御さんから「咳止めシールを貰えますか」と頼まれることがあります。「咳止めシール」と称される薬はホクナリンテープ(ツロブテロール貼付剤)です。貼るだけで済むので、薬を飲みたがらない子どもに重宝します。しかし鎮咳薬(咳止め)ではありません。喘息(または気管支炎)に対して気管支拡張薬として使用する薬です。

2023年5月4日

新型コロナ感染症:子どもの後遺症は3.9%

 国内で新型コロナウイルスに感染した子どものうち、発症から1ヶ月以上たっても症状が残る割合が3.9%だったことをが、日本小児科学会の研究班から51日に発表されました。対象となった人は、20202月から2023411日までにデータが集められた20歳未満の4606人です。このうちの181人に後遺症が認められました。主な症状は、発熱(30%)、咳(30%)、嗅覚障害(18%)、倦怠感(17%)、味覚障害(15%)、腹痛(9%)、頭痛(8%)、下痢(8%)、嘔気(6%)でした。数は少ないものの、筋肉痛、胸痛、意識障害、うつ状態の報告もありました。

2023年3月19日

アレルギー性鼻炎を治す舌下免疫療法(再掲)

 スギ花粉の飛散がピークを迎えています。全年齢層におけるスギ花粉症の有病率が38.8%に達している現在(2019年全国調査)、鼻水やくしゃみに悩まされている方も多いのではないでしょうか。子どももその例外ではありません。2020年11月にホームページにアップしたコラムを一部改訂して再掲いたします。

2023年2月21日

目指すは100歳まで現役ランナー

 54歳の誕生日に一念発起してランニングを始めました。医師になってからの30年間、忙しさにかまけて運動らしい運動を何もせず、徐々にメタボ体型に移行する自分の姿を見て、「このままじゃまずい」と焦ったからです。ランニングを選んだ理由は、すぐに始められる、一人でできる、いつでもできる、どこでもできる、大した用具が要らない、といった安直なものでした。もし三日坊主で終わったら別の運動を考えればいいやと気軽に始めたのですが、これが自分の体質と気質にぴったりはまったようで、以来11年間ずっと走り続けて今日に至っています。

カルシウムを摂って骨の貯金をしよう

 骨は身体の中で多くの役割を担っています。身体を支える、運動の支点になる、内臓を守る、血液を作る、カルシウムを蓄える、などです。育ち盛りの子どもにおいては、背を伸ばす(骨の縦伸び)、骨格を丈夫にする(骨の横伸び)という大切な役割もあります。

 人生で骨量が最も多くなる時期は男女ともに20歳前後です。一生分の骨量は10代で決まるといわれており、大人になってから増やそうとしても難しいです。成長期の骨づくり「骨貯金」が、将来の骨の健康を維持するカギになります。

2023年2月12日

新型コロナ感染症が2類相当から5類へ。マスクはどうなる?

 新型コロナウイルス感染症の法律上の分類が202358日、2類相当からインフルエンザ並みの5類に引き下げられます。ウイルスが変異を繰り返して弱毒化したこと、ワクチンの普及に加えて自然感染により免疫を持つ人が増えたこと、治療法が開発されてきたことなどが分類変更の背景にあります。ゼロコロナからウィズコロナへの方針転換といえましょう。

2023年1月3日

過剰なブルーライトは睡眠を妨げる

 夜眠れない、朝起きられない、学校に遅刻する(または行けない)などを訴えて来院する子どもたちが増えています。さまざまな理由が考えられますが、過剰なブルーライトへの曝露が原因の一つかもしれません。ブルーライトがもたらす睡眠への影響について解説いたします。

2023年1月1日

新型コロナウイルス感染症の最新動向(2023年1月)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生から約3年が経過しました。ウイルスの猛威が続く一方で、感染対策の緩和が徐々に進められています。2023年の動向を予想してみます。

 厚生労働省は昨年1221日、COVID-19の重症化率と致死率の最新データを公表しました。6070代の年齢層において、オミクロン株が流行した第7波(202278月)の致死率は0.18%で、デルタ株が流行した第5波(2021710月)の1.34%、オミクロン株に置き換わった直後の第6波(202212月)の0.70%に比べて大きく低下しました。インフルエンザの致死率0.19%とほぼ同等です。重症化リスクが最も高い80代以上の年齢層においても、COVID-19の致死率は1.69%に低下しました(第5波で7.92%、第6波で4.57%)。こちらもインフルエンザの致死率1.73%とほぼ同等です。ただし、COVID-19とインフルエンザのデータは異なる対象者を見ているため、単純に比較して「両者が同等」と結論づけることはできません。