2023年9月24日

インフルエンザの大規模流行に警戒を

 インフルエンザが異例の早さで流行入りしました。2023年第37週(91117日)時点で、神奈川県における1医療機関あたり1週間のインフルエンザ患者数は9.37人です。流行入りの目安が週間に1人、注意報レベルが週間に10人、警報レベルが週間に30人ですので、注意報レベルまであと一歩のところまで来ています。当院でも8月最終週から感染者が徐々に増え始め、直近の第38週(91824日)の1週間で注意報レベルを大きく超えました。大和市域の複数の小中学校と高校で集団感染が発生しています。今後いっそうの警戒が必要です。

 新型コロナ感染症が猛威を振るっていた23年間(202022年)、インフルエンザはほとんど見かけませんでした。その理由として、社会全体が手指消毒、マスク着用、三密回避などの感染防御対策を徹底したことがあげられます。海外との交流が激減し、インフルエンザの持ち込みがなかったことも大きな要因でした。ただ流行が途絶えた結果として、インフルエンザに対する免疫が大きく落ち込んでしまいました。コロナ禍から脱し始めた昨季(202223年)に小さな(しかし長引く)流行があったことから、今季(202324年)はさらに大きな流行があるかもしれません。実際に、フランスや米国など北半球の欧米諸国で、202122年冬に小規模流行、202223年冬に大規模流行が起こっています。日本においても一年遅れで同じ流行パターンに見舞われる可能性を想定しておく必要がありそうです。

 コロナ禍の前、インフルエンザは毎年冬季に流行を繰り返し、人口の510%(日本では6001200万人。半数は15歳未満の小児)が罹患していました。インフルエンザによる超過死亡は毎年、数千人を数えていました。死亡例の多くは高齢者で、細菌性肺炎の合併が主たる原因です。小児でも肺炎や中耳炎を併発して入院に至る例があり、脳症での死亡例が稀に報告されています。インフルエンザはハイリスク者にとって侮れない感染症といえます。

 ワクチン接種はインフルエンザの予防に一定の効果を示します。ワクチンの発症防止効果は、小児、成人ともに3070%です。微妙な数値にも思えますが、たとえば有効率50%のワクチンを全国民が接種すると仮定すると、6001200万人の感染者を300600万人に半減させることができます。個人的な防御は十分でなくても、社会的な防衛の意義は大きいといえます。また、重症化阻止効果は4050%です。小児においても入院の抑制率が50%以上であったとする調査成績が、慶応大学小児科から報告されています。

インフルエンザワクチンは、A09型(A/H1N1pdm2009)、A香港型(A/H3N2)、B型(ビクトリア系統)、B型(山形系統)の4種類を含有する4価ワクチンです。今季すでにインフルエンザに感染した方も、ワクチン接種により残り3種類のウイルス株に対する免疫を獲得することが期待できます。