2006年12月30日

アレルギー疾患の増加

 気管支喘息にかかっている幼稚園児や小中学生の割合が10年間で倍増し、過去最高を更新したことが、文部科学省の学校保健調査(平成18年度)で明らかにされました。喘息児の割合は、幼稚園2.4%、小学校3.8%、中学校3.0%、高校1.7%にのぼっています。また、今年度から調査項目に加えられたアトピー性皮膚炎の割合は、幼稚園3.8%、小学校3.6%、中学校2.8%、高校2.2%です。他の調査結果と合わせて見ると、アレルギー疾患すべて(花粉症や食物アレルギーも含めて)が増加していて、おおよその有病率は5~15%と推測されます。当クリニックにおいても、これとほぼ同じ傾向が認められます。

2006年12月1日

障害から才能へ

 私が当地で障害児支援に携わって約8年が経ちます。この間に多くの子どもたち、ご家族の方々と接する機会がありました。「われ以外みなわが師」の教訓どおり、各々のご家庭の子育て体験を伺いながら、私なりの支援のあり方を模索してまいりました。私がつねに心がけている基本姿勢は、① 疾患について正確な情報を提供すること、② 子育てに奮闘するご家族に共感し、親身になって援助すること、③ 療育について必要な措置を講じること(他の医療・福祉サービスへの紹介も含めて)の三点です。まだまだ至らない点も多いと思いますが、これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。


2006年11月1日

早寝早起き朝ごはん

「早寝 早起き 朝ごはん」の国民運動をご存知でしょうか。このような合言葉を唱えなければならないほど、現代の子どもたちの生活リズムは「夜ふかし 朝寝坊 朝食抜き」に傾いています。全国的な調査によると、小学生の15%、中学生の70%は夜11時以降でないと就寝しません。小学生の15%、中学生の22%は朝食をとらずに登校します。睡眠と食事の乱れは健康を害するだけでなく、学力低下や非行にもつながるため、早急な対策が必要です。
 

2006年9月1日

胎内で将来の病気が作られる

 小さく生まれる赤ちゃんが増えています。厚生労働省の発表によると、赤ちゃんの平均出生体重は1980年に3194gだったのが、1990年に3141g、2000年に3053gと年々減り続け、この2~3年では3000gを割り込みました。その背景には20~30代の女性における、行き過ぎたスリム志向とダイエットがあります。肥満がすべての年代で増加している中、痩せが唯一目立つのがこの世代で、妊娠中の体重増加も低下傾向にあります。古来から日本では「小さく産んで大きく育てる」ことが美風とされ、今まさにその通りに世の中の流れが進んでいます。しかし、この現象は本当に好ましいことでしょうか!? 実は、胎児期に低栄養状態にさらされた子どもは、将来的に生活習慣病(高血圧、心臓病、糖尿病など)にかかりやすいことが、最近の調査・研究で明らかにされています。

2006年8月1日

おたふくかぜが難聴を起こす

「ムンプス難聴」という病気をご存知でしょうか。ムンプス(mumps)とはおたふくかぜのこと。おたふくかぜが髄膜炎や睾丸炎を起こすことはよく知られていますが、難聴については “稀な合併症” という認識しかこれまで持たれていませんでした。しかし最近になって、ムンプス難聴の合併率が予想されていた以上に高く、しかも一旦起こるとまず治らないことが判明し、その対策が重視され始めています。今回のコラムではムンプス難聴を解説し、予防接種の重要性をあらためて強調したいと思います。


2006年7月3日

禁煙のすすめ

 狭い部屋でタバコを5本吸うと、周囲の人も1本吸わされる計算になります。この「受動喫煙」に関する医学的データが集まるにつれて、子どもへの健康被害が予想されていた以上に深刻なことが分かってきました。何も知らずに強制的にタバコを吸わされる子どもに代わり、子どもの健康を守るために声を上げるのが小児科医の役割です。喫煙者の方々にとっては耳の痛い話ですが、余計なお節介!と言わずに最後までご一読ください。

2006年6月1日

指しゃぶりはいつまで?

 昨年8月にホームページに掲載した「おしゃぶりは必要? 不要?」の補遺版として、指しゃぶりの必要性についてもまとめました。平成18年4月に日本小児科学会から発表された「指しゃぶりについての考え方」をもとに、筆者の考え方を一部書き加えて皆様にお伝えいたします。

 乳児期:生後12ヶ月頃までの指しゃぶりは、発達過程における生理的な行為です。指にかぎらず何でも口に入れて、形や味や性状を確かめようとします。これを無理にとめる必要は全くありません。赤ちゃんの好奇心を大切に育てたいですね。


2006年5月11日

成育外来の開設に向けて

 当クリニックは、2006年8月以来、毎週土曜午後に「乳幼児健診」「成育外来」を行っています。今回のコラムでは「成育外来」とは何か!? についてご説明いたします。

2006年5月1日

イオン飲料は身体によいか

 皆さんはイオン飲料にどのようなイメージをお持ちでしょうか。イオン飲料の宣伝文句には「血液と同じ成分」「身体にやさしく水分補給」などと書かれています。水を飲むよりもイオン飲料を飲む方が身体に良い、なんとなく健康的、と考える人も多いと思います。本当にその通りでしょうか!?

2006年4月1日

子どもの病気 ウソ?ホント?

 日ごろ保護者の方々から寄せられることの多いご質問に答える形で、子どもの病気の常識を考え直してみましょう。当たり前に思われている知識の中に、意外と多くの誤解が潜んでいる!?ことを感じます。

[1] ワクチンを接種しなくても、病気に自然にかかればいい → ×
定期接種のBCG・三種混合・ポリオ・麻疹・風疹などの意義は言うまでもありません。これらの病気は、かかると命取りになるか、社会に重大な迷惑を及ぼす可能性があるため、ワクチンによる予防は絶対に必要です。では、任意接種のおたふくかぜと水痘(みずぼうそう)はどうでしょうか。「おたふくかぜも水痘も重い病気ではないので、自然にかかるのを待てばいい」という考えもあります。しかし、これらにかかると約1週間の自宅安静と治療が必要です。子どもは幼稚園・学校に行けない、働いている母親は仕事を休まざるを得ないなど、不都合が多く生じます。さらに重要な点は合併症です。たとえば、おたふくかぜは髄膜炎を2~10%、難聴を0.03~0.3%の頻度で合併します。ワクチンを接種しておけば、たとえかかっても(接種してもかかる率は15~20%)、合併症を免れて軽症で済むことが期待できます。

2006年3月1日

食育のすすめ

 食べることは生きるための基本です。伸び盛りの子どもにとって、「食」は単なる栄養の補給にとどまらず、健康の増進と維持、家族の絆の強化、食文化の理解と継承など、多くのことを体験し学習する場でもあります。食にかかわる子どもの育成、すなわち食育は、知育・徳育・体育とならび、子どもの健全な成長に欠かせない大切なものです。

2006年2月27日

かぜと抗生物質

 急性上気道炎(いわゆる風邪)の多くは抗生物質を必要としません。今回のコラムでは「抗生物質の使いすぎは耐性菌を増加させる」「抗生物質はあらゆる風邪に効く万能薬ではない」「抗生物質の効く風邪をきちんと選別しなければならない」ことを解説します。

2006年1月13日

子どもの薬の話

 内科系(小児科、内科など)の治療の主役は「薬」です。病巣を切ることを最終的な解決手段とする外科系とは、この点が根本的に異なります。筆者は、研修医のときに先輩から「小児科医が処方する薬は外科医がふるうメスと同等の重みがある」と厳しく教わりました。今もその戒めを心して薬を決めています。筆者が子どもに薬を処方する際の方針は、「真に必要な薬をシンプルに」。あれもこれもと欲張りすぎると、量が増えて味が複雑化して飲みにくい上に、稀といえども薬物相互作用や副作用の心配が増します。今回のコラムでは、薬に関する疑問についてお答えしましょう。

2006年1月5日

ファーストフードと肥満

 わが国の肥満児は過去30年間で約3倍に増加しました。小学校高学年では8~9人あたり1人の割合です。肥満とそれに伴う生活習慣病は、今後さらに深刻度を増すことが予想されます。私事ですが、筆者は米国のセントルイス市で3年余り生活し、成人の約6割が過体重、うち3割が肥満という「肥満大国」の実態をつぶさに見てきました。米国人の問題は、生活様式の西欧化が進む日本人にとって他所事ではありません。今回のコラムでは、米国人の肥満化の元凶とされるファーストフード(fast food)を取り上げ、食習慣の問題について言及します。