2010年11月17日

きれい好きが過ぎるとアレルギー !?

 アレルギー疾患が増えています。最大の原因は環境の変化です。冷暖房完備の密閉式住宅(ダニの増加)、大気汚染、スギの植林政策、動物性蛋白を多くとる食生活は、すでによく知られた原因です。近年、これらの要素とは別に、乳幼児期に非衛生的環境にいたり感染症にかかったりするとアレルギー疾患にかかりにくい(逆にいうと、感染症にかかる機会が少ないとアレルギー疾患を発症しやすい)とする「衛生仮説」が注目を集めています。

2010年8月31日

細菌性髄膜炎を防ぐワクチン二種(改訂版)

 細菌性髄膜炎を起こす原因菌の80~90%がヒブと肺炎球菌です。ヒブと肺炎球菌を防ぐワクチンは、すでに諸外国で定期接種として広く普及しており、今や細菌性髄膜炎を見る機会はほとんどありません。さらに二次的な効果として、ヒブと肺炎球菌による菌血症や肺炎など重症疾患の発生も著しく減っています。一方、日本ではワクチンの認可が大幅に遅れているため、今でも年間に約千人の子どもが細菌性髄膜炎にかかり、その四分の一が尊い生命を失ったり重い後遺症に苦しんだりしています。欧米先進諸国に比べて、日本のワクチン政策は約十年から二十年遅れています。その間に救えたはずの生命はすでに数百人にのぼります。この酷い実態は、厚生労働省の無為無策による人災と言えましょう。日本は諸外国から「ワクチン貧国」と嘲笑される始末です。最近になってようやく厚生労働省は重い腰をあげ、2008年12月にヒブワクチン(アクトヒブ)、2010年2月に小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)を認可しました。この二種類のワクチンを接種することで、細菌性髄膜炎の85%は予防できます。

2010年8月25日

子どもの口と歯の健康

 口や歯に関する質問を日常診療の中でしばしば受けます。小児科医として(歯科医に任せっきりにせず)口と歯の健康に積極的にかかわりたい、との思いでQ&A集を作りました。

Q1 舌の上全体が白くなって、拭いても取れません。治療は必要ですか?
A1 多くの場合、母乳やミルクの成分が固まって舌のシワに入り込んだものです。ときどきガーゼで拭いて清潔を保ちましょう。体調が良くない時、口の中に元々いるカンジダ(カビの一種)が増えて舌を覆うことがあります。カンジダに毒性はほとんどないので、心配はいりません。口の中を清潔にするだけで健康な舌に戻ります。

2010年4月26日

血液型の疑問にお答えします(改訂版)

[1] 血液型とは何でしょうか? 
 人間の体内を流れる血液は、1) 全身に酸素を運ぶ赤血球、2) 病原体などの異物から身を守る白血球、3) 出血を止める血小板、4) 液体成分の血漿、からできています。私たちにとってなじみの深いABO式血液型は、赤血球の表面に突き出た糖鎖の違いによりA、B、O、ABの4型に分類する方式です。赤血球の血液型はABO式の他にも、Rh式、MN式、ルイス式、P式、ダフィー式など数通りの分類法があります。さらに血液型は赤血球だけに限らず、白血球、血小板、血清にもあります。
 輸血の際にとりわけ重要な血液型が、赤血球のABO式とRh式です。型が合わないと、輸血した赤血球が壊されて溶血する危険があります。また、臓器移植に重要な役割を演じるのは白血球の血液型(HLA)です。型が合わないと拒絶反応を起こします。血液型は、他人の血液や臓器を自分が受け入れられるかどうかの判定材料として用いられます。

ジェネリック医薬品

 ジェネリック医薬品という言葉をご存知ですか。ジェネリック医薬品とは、特許の切れた薬を他のメーカーが真似て作ったものです。新薬の開発に伴う費用が要らないため、価格を先発品よりも2~8割安く設定できます。国(厚生労働省)は医療費削減のためにジェネリック医薬品の使用を強く推奨し、テレビ・コマーシャルは「同じ薬が半額以下」「使わなきゃ損」と盛んに宣伝しています。まるで「ジェネリック医薬品を積極的に使わない医療機関は遅れている」と言わんばかりです。しかし本当に良い事ずくめなのでしょうか。

2010年3月14日

麻疹の根絶は間近い

 厚生労働省は3月10日、昨年1年間の麻疹患者数が741人だったと発表しました。麻疹による死亡者は1人もいませんでした。わが国の歴史上、年間の患者数が1000人を下回った記録はなく、死亡者が1人もいなかったことと合わせて、まさしく史上初の快挙でした。ほんの10年ほど前に、年間20~30万人が罹患し、100人以上が死亡していたことを考えると、驚くべき進歩です。当クリニックにおいても、22ヶ月間連続して、麻疹にかかった子どもを診ていません。麻疹の根絶の日がいよいよ近づいて来たことを実感します。 

2010年1月13日

新規のワクチン二種

[1] 肺炎球菌ワクチン [ワクチン名;プレベナー]
 肺炎球菌とヘモフィルス菌(ヒブ)は、細菌性髄膜炎を起こす病原菌です。髄膜とは脳を包み込む膜です。頭蓋骨と脳の間にあり脳を守るクッションの役割を果たしています。髄膜炎とは、この髄膜に病原体が侵入して起こる病気です。脳と隣り合った場所にあるために、脳にもしばしば深刻な打撃を与えます。わが国では年間に約1000人の小児が細菌性髄膜炎にかかり、5~10%が死亡し、20~30%がけいれんや難聴などの重い後遺症を残します。