2017年12月10日
インフルエンザ検査は有用か?
インフルエンザの診断について考えてみます。冒頭の「インフルエンザ検査は有用か?」の問いに対する答えは、もちろん「有用」です。インフルエンザの流行期において、高熱を出す病気はインフルエンザ以外にもいろいろあります。検査によってインフルエンザを正しく診断し、適正な治療を行うことで、発熱の期間を約25時間短縮でき、入院(重症化)のリスクを約6割に減らすことができます。インフルエンザ検査のなかった時代は(わずか十数年前のことです)、インフルエンザと細菌感染症を明確に区別することができず、やむを得ず抗菌薬(インフルエンザには無効)を使用する場面が多々ありました。インフルエンザ検査は、インフルエンザをピンポイントに絞って治療するために欠かせない道具といえます。
2017年10月25日
かぜで喉(のど)が赤くなるって本当 !?
子どものかぜを診療していると、「喉は赤いですか?」と尋ねられることがよくあります。かぜをひくと、本当に喉が腫れたり赤くなったりするのでしょうか? 今回のコラムでは、かぜの診療でよく使われるフレーズの確かさについて検証してみたいと思います。
2017年10月15日
鼻水と鼻づまりの話 〜 薬の使用は慎重に 〜
かぜをひくと、発熱、鼻水・鼻づまり、咳・痰などが現れます。子どもがつらそうな顔をしていると、かぜの症状を一刻も早く取り去ってあげたいのが親の心情でしょうね。しかしこれらの症状は、病原体を体内から排除するための大切な生体防御反応です。薬剤を使って無理に抑え込むことが必ずしも良い治療とは限りません。発熱の意義については、コラム「熱が出る仕組み」(2012年9月)で述べました。今回のコラムでは、鼻水・鼻づまりの仕組みについて解説します。
2017年8月27日
インフルエンザの感染予防対策 Ⅱ
インフルエンザワクチンの予約開始(9月7日)に先がけて、インフルエンザの予防対策をまとめました。5年前にも同名のコラムを掲示しましたが、その後の情勢の変化を考慮して、最新版をお届けいたします。
インフルエンザの流行の中心は15歳以下の小児です。最初に保育園・幼稚園・学校で集団発生し、次いで家族を通して地域全体に拡散します。毎年、全国で約1千万人(国民の10人に1人)が罹患します。これだけ大規模に流行する感染症は他にありません。インフルエンザの予防対策の基本は、一にワクチン、二に衛生管理(手洗い、マスクなど)、三に体調管理です。
2017年7月17日
細菌性髄膜炎を防ぐワクチンの効果(改訂第三版)
2014年7月6日に掲出した記事の改訂版をお届けいたします。2015年の髄膜炎罹患率のデータが新しく追加されたのを機に、少々加筆・修正したものです。
細菌性髄膜炎(以下、髄膜炎)は恐ろしい病気です。普段は鼻や喉にいる細菌が血液に侵入することがあり、それが脳を包む髄膜に取り付くと、最終的には脳そのものに病気を起こします。髄膜炎を発症すると、医学の進んだ現在においても、死亡率3〜5%、後遺症率20〜25%という厳しい数字が並びます。髄膜炎を防ぐワクチンが導入される前の日本では、一年間に約千人の子どもが髄膜炎に罹っていました。そのうち、ヒブによる髄膜炎が約600人、肺炎球菌による髄膜炎が約200人。二つの細菌による髄膜炎で亡くなる子どもが約50人いました。
細菌性髄膜炎(以下、髄膜炎)は恐ろしい病気です。普段は鼻や喉にいる細菌が血液に侵入することがあり、それが脳を包む髄膜に取り付くと、最終的には脳そのものに病気を起こします。髄膜炎を発症すると、医学の進んだ現在においても、死亡率3〜5%、後遺症率20〜25%という厳しい数字が並びます。髄膜炎を防ぐワクチンが導入される前の日本では、一年間に約千人の子どもが髄膜炎に罹っていました。そのうち、ヒブによる髄膜炎が約600人、肺炎球菌による髄膜炎が約200人。二つの細菌による髄膜炎で亡くなる子どもが約50人いました。
2017年7月7日
2017年5月21日
夏かぜに漢方薬 〜 実はよく効く 〜
漢方薬と聞いて何を想起するでしょうか。「何となく効きそうな気がする」から、「胡散臭い、怪しげ、効くわけがない」まで、人によって様々なイメージが語られると思います。かく言う私も20年前までは後者の部類でした。今と違って学生時代に漢方医学の講座がなかったから、と言い訳しておきます。しかし漢方医学を独学で勉強し、漢方薬を実際に使ってみて、その著しい効果に感服したり驚嘆したりする場面がどんどん増えています。こんなに便利で役立つツールを利用しない手はない! 西洋医学を主軸に据えながらも、カバーできない部分を漢方医学で補完する、というのが当院の基本方針です。西洋薬か漢方薬か、という二者択一にこだわるのではなく、両方のいいとこ取りをすればいいと考えています。
2017年5月7日
抗菌薬の適正使用をあらためて考える
古い保存ファイルを整理していたら、読売新聞・電子版に掲載されていた数年前の記事を見つけました。内容をほぼそのまま引用します。皆様はどうお考えになりますか?
風邪で抗生物質を飲ませると早く治る? 〜 悩める母より 〜
近所の小児科は、風邪で受診すると必ず抗生物質を処方します。家から近いし、先生も話しやすいし親身で丁寧だし、抗生物質の処方以外、あまり不満はありません。割と人気がある小児科です。でも、喉がちょっと赤いねぇと言っては抗生物質。咳が出るねぇと言っては抗生物質。ウイルス性の風邪に抗生物質は効かないんですよねぇ?と聞いたら、「そうなんですけど、抗生物質を飲んだ方が早く治るんですよ、なぜか」と驚きの発言をされてしまいました。
子供は今年から幼稚園に通い出し、もともとそんなに丈夫でないのも手伝って、月2回以上風邪を引くことがあります。そのたびに抗生物質じゃあ耐性菌が出来てしまうのではないかと心配で、またずっと米国で子育てしてきたせいもあって(米国では中耳炎など細菌性のものにしか処方しない)、もらった抗生物質は飲ませていません。セカンドオピニオンをと思って別の小児科へも行きましたが、同じく抗生物質を処方されました。
この件についての有識者の方、同じく悩んでいる方のご意見を聞きたいです。風邪で抗生物質を飲ませた方が早く治りますか?
子供は今年から幼稚園に通い出し、もともとそんなに丈夫でないのも手伝って、月2回以上風邪を引くことがあります。そのたびに抗生物質じゃあ耐性菌が出来てしまうのではないかと心配で、またずっと米国で子育てしてきたせいもあって(米国では中耳炎など細菌性のものにしか処方しない)、もらった抗生物質は飲ませていません。セカンドオピニオンをと思って別の小児科へも行きましたが、同じく抗生物質を処方されました。
この件についての有識者の方、同じく悩んでいる方のご意見を聞きたいです。風邪で抗生物質を飲ませた方が早く治りますか?
2017年3月22日
食物アレルギーの常識が変わった
[1] 予防について
食物アレルギーの病態はこれまで十分に解明されておらず、その対処法は手探りに近い状態でした。最新の研究により、従来 “常識” とされてきた通説が次々にくつがえされ、食物アレルギーの医療に大転換が起きています。たとえば、根拠が見いだされず完全否定された “都市伝説” として、(1) 妊娠中や授乳中の母親が食物を除去すると、子どもは食物アレルギーになりにくい、(2) 離乳食の開始を遅らせたり特定の食物を除去したりすると、子どもは食物アレルギーになりにくい、があげられます。先回りして食物を除去しても、食物アレルギーの発症を予防することはできません。食物を摂取しないと ”経口免疫寛容” というアレルギー阻止機構が誘導されず、食物アレルギーがむしろ促進されます。「卵や乳製品は1歳過ぎまで待ちましょう」は、誤りであるばかりか逆効果だったわけです。離乳食を始めたら、早い時期から一種類ずつ様々な食物を試すことが食物アレルギーの予防につながります。ただし食物アレルギーを心配する場合、最初の一口は耳かき一杯程度の少量から、という慎重さは必要でしょう。
2017年2月11日
幼児の便秘 〜 排便習慣は大切です 〜
便秘とは「便が腸内に滞って、出にくい状態」です。排便が週3回より少なかったり、排便時に痛みや出血を伴ったりすれば、便秘といえます。排便時に苦痛を感じると、子どもは排便を我慢して回避しようとします。便が腸内に滞ると水分が吸収されて硬くなり、排便時の苦痛がさらに増します。すると排便をますます我慢するようになります。便が常に溜まった状態になると腸管が拡張し、便意を感じる神経が鈍ります。そして便はさらに大量に腸内に溜まります。こうして便秘は悪循環していきます。幼児期に便秘を生じると、約4割が学齢期になっても便秘に悩まされ続けます。できるだけ早い時期の対処が望まれます。
2017年1月11日
腸内細菌叢の乱れは病気を起こす
われわれ人間の腸管内には、500種類、数百兆個、重さに換算して1〜2kgの腸内細菌が共生しています。多種多様な細菌が群生する様はお花畑(フローラ)にたとえられ、腸内細菌叢(腸内フローラ)とよばれます。
2017年1月1日
北オホーツク100kmマラソン 完走記
新年おめでとうございます。本年も地域の子どもたちの健康増進に貢献してまいります。皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。
昨年7月31日、北オホーツク100kmマラソンに出場しました。42.195kmより長い距離を走るのは初めての経験でした。苦難に満ちた道中でしたが、大きな達成感を得ることもできました。年頭のコラムは、その時の心象風景を書き留めたものです。神奈川県医師会報の「平成29年 新春随想増刊号」に掲載された文章に一部、加筆しています。医学・診療とは関係のない駄文ですが、お時間が許せばご一読ください。
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