2017年7月7日

夏の皮膚疾患とスキンケア

 夏は子どもたちが屋外で活発に遊ぶ季節。身体の露出箇所が増えるため、皮膚のトラブルが絶えません。今回は夏の皮膚疾患の代表例をあげて、その対策を示します。

[1] 虫さされ
 虫は人間を見つけると近寄ってきます。体温や汗の臭いに引き寄せられるようです。蚊やダニに刺されると、皮膚が赤く腫れて痒みを生じます。刺された時にまず行うべき処置は、痒みを抑えることです。流水で冷やす、保冷剤を当てる、痒み止めの外用薬(市販の抗ヒスタミン薬で結構です)を塗るなどの手段を用いて、刺された部位を掻かないように努めて下さい。パッチによる保護も有効です。痒さのあまり掻きむしって傷を作ると、細菌が入り込んで膿痂疹(とびひ)に至ることがあります。腫れや痒みがひどい時はステロイド外用薬、膿痂疹を生じたら抗菌薬の外用薬をそれぞれ使用します。そうなったら医師にご相談ください。
 チャドクガ(毛虫の幼虫)の毒針毛に触れると、赤い膨疹がたくさん出現し、強い痒みを生じます。もしも触れてしまったら、強い水圧の流水で洗い流す、ガムテープなどで毒針毛を取り除く、などの応急処置をしましょう。膨疹を治すためにステロイド外用薬が必要ですので、やはり医師にご相談ください。

[2] すり傷
 走り回っている最中に転んですり傷を作ることはよくありますね。そういう時は、① 傷口を流水で念入りに洗い流して、砂や土などの汚れを落とします。水道水で大丈夫です。石鹸は必ずしも必要ありません。消毒薬は決して使わないこと。傷の治りをかえって妨げます。 ② 洗った後、創傷被覆剤(市販のキズパワーパッドなど)を当てて包帯や絆創膏で固定します。食品用のラップで代用することもできます。傷口を湿った状態に保つことが肝要です。もしも乾いていたら、プロペト軟膏や市販の白色ワセリンを塗ってからラップを当てるといいです。ガーゼや絆創膏など、乾いた素材を傷口に直接当ててはいけません。傷口に貼り付いてしまい、交換する際に再生中の皮膚細胞まで一緒に剥がしてしまいます。③ 被覆剤やラップを毎日、交換します。その都度、流水で洗浄しましょう。これを数日繰り返しているうちに傷は治ります。
 以前は、傷から滲み出る液をガーゼに吸い込ませ、傷口を乾かしてかさぶたを作ることで治す方法が主流でした。しかし現在は、滲出液をそのまま保持して傷口を湿ったままにする方が早く綺麗に治ることが判明し、こちらが主流になっています。「湿潤療法」といいます。

[3] あせも
 気温が上がり発汗が増えると、あせもができやすくなります。あせもとは、汗を作る「汗腺」の出口が垢や埃で詰まり、皮下に溜まった汗が周囲に炎症を及ぼす状態です。軽いあせもは自然に治りますが、悪化して強い痒みを生じたり掻き壊しによる膿痂疹(とびひ)の原因になったりすると、治療が必要です。腫れや痒みがひどい時はステロイド外用薬、膿痂疹を生じたら抗菌薬の外用薬をそれぞれ使用します。医師にご相談ください。
 あせもは予防が大切です。濡れタオルやスキンケアシートで汗をこまめに拭う(押さえるようにして、強くこすらないでください)、シャワーで汗を洗い流す(石鹸の使用は1日1回までに留めましょう)、通気性のよい衣服を着る、などが有効です。

[4] 日焼け
 過度の紫外線は、皮膚細胞を損傷します。長期的には、シミやシワなど皮膚の老化を早める、良性・悪性の腫瘍を起こすことがある、などの弊害をもたらします。紫外線量が増える夏は、日中(特に10〜14時)の屋外活動を控えめにする、できるだけ日陰で遊ぶ、服装に工夫をこらす(つばの広い帽子、肌の露出が少ない衣服)、日焼け止めを塗る、などの対策を講じましょう。
 日焼け止めは、乳児期から使うことができます。ベビー用、子供用として市販されている、低刺激性で無香料、無着色の製品を購入してください。紫外線をカットする強さを示すSPFは、日常生活で15〜20、海や山で20〜40が目安です。日焼け止めは汗や水で落ちるので、2〜3時間毎に塗り直して効果を持続させましょう。使用後にきちんと洗い落としておくことも大切です。
 適度の紫外線は、殺菌作用やビタミンDの産生など身体に有益な作用をもたらします。紫外線は必ずしも悪者というわけではなく、過剰に恐れたり神経質になったりする必要はありません。夏の太陽と上手に付き合いましょう。

[5] 水いぼ
 ウイルスが皮膚に感染して起こる病気で、正式には伝染性軟属腫といいます。水いぼは一年中みられる感染症ですが、夏は肌の露出が多くて目立つため、幼稚園・保育園の集団生活でしばしば問題になります。
 水いぼがあっても、幼稚園・保育園を休む必要はありません。水いぼのウイルスは水を介してうつることはないので、プールに入っても構いません。プール禁止を頑なに言い張る幼稚園・保育園がいまだに存在することは残念です。ただし、ウイルスは皮膚どうしの接触でうつるので、服や水着で覆われていない水いぼは撥水性の絆創膏で覆って隠す、衣類・タオル・浮き輪・ビート板を共用しない、などの配慮が必要です。マナーをしっかり守って、皆が気持ちよくプールで遊びたいですね。
 水いぼは放置しても自然に治る病気ですが、治るまでに半年から2〜3年かかります。放置している間に、皮膚を掻くことで他の場所に広がったり、他人に触れてうつしたり、掻きこわして膿痂疹(とびひ)をつくったり、弊害をあれこれ起こすことがあります。したがって、水いぼの数が少ないうちに摘除してしまう治療法も選択肢の一つです。薏苡仁(ヨクイニン)という漢方薬の内服が効く場合もあります。水いぼでお悩みの方は医師にご相談ください。