2016年12月12日

薬に関する疑問にお答えします

 日常の診療で、薬の飲み方などの質問を受ける機会が多々あります。今回のコラムは、薬に関する疑問へのお答えを掲載いたします。

2016年10月26日

予防接種を上手に受けるコツ

 近年の小児医療は「治療から予防へ」と大きな転換期に入っています。予防接種の種類が増加したことに反比例して、重い感染症に罹患する子どもの数が大幅に減少しました。たとえばヒブ髄膜炎は、2011年にワクチンが定期接種化されて以来、ほぼゼロになりました(それ以前は毎年50人前後の子どもが亡くなっていました)。予防接種は今や、子どもの健やかな成長に欠かせない重要なアイテムです。しかし子どもにとっては、痛い注射の本数や回数が増えるのは大変なこと。特に1〜2歳を過ぎて物事がはっきり分かる年頃になると、注射を怖がったり嫌がったりして親御さんを困らせることもしばしばです。今回は、注射を上手に受けるコツを伝授しましょう。

2016年8月30日

麻疹騒動に学ぶ、集団免疫の大切さ

 2016年の夏、二つの麻疹(はしか)騒動が持ち上がりました。一つは千葉県松戸市での小流行です。7月22日からの1ヶ月間で麻疹患者10名が報告されました。年齢は0歳3名、1歳2名、4歳1名、6歳1名、15歳1名、20代1名、30代1名です。10名中9名(1歳の1名以外)は、麻疹ワクチンを接種していませんでした。患者から検出されたウイルスは、海外由来の遺伝子型で一致しています。全員、海外渡航歴がないため、市内で感染したと考えられます。発端者は発見できませんでした。ここで問題視されるのは4歳以上の5名です。ワクチンを接種していれば自ら罹ることはなく、周囲の人に感染させることもなかったはずです。もう一つは、千葉市の幕張メッセで起こった麻疹の持ち込みです。同地で開催された大規模コンサートに、麻疹を発症している19歳男性が参加していました。この男性は関西在住で、8月9日に発熱、13日に発疹を生じ、後に麻疹と診断されました。8月初旬にバリ島を旅行しており、この時に感染したと推測されます。コンサートのみならず、その前後(13〜15日)に東京や鎌倉を訪れていました。この男性は6人家族で、誰一人として麻疹ワクチンを接種しておらず、家族3人も麻疹を発症しています。

2016年7月26日

結核は過去の病気ではありません

 2016年4月から大和市でBCGの個別接種が始まりました。BCGは結核を予防するためのワクチンです。1921年にフランスで開発され、1943年に日本でも使用が開始されました。BCGは結核の撲滅に向けて大きな役割を果たしています。今回はBCGと結核の話をしましょう。

2016年6月5日

子どもを受動喫煙から守ろう

 世界禁煙デーの5月31日、受動喫煙が原因で死亡する人が国内で年間1万5千人に上ることが厚生労働省から公表されました。1万5千人の内訳は、肺がん2484人、虚血性心疾患4459人、脳卒中8014人、乳幼児突然死症候群(SIDS)73人です。また、世界保健機関(WHO)の発表(2011年)によると、受動喫煙による死亡者数は全世界で年間60万人に達し、そのうちの16万5千人が5歳未満の子どもです。

2016年5月19日

夜泣きの原因の一つは腸内細菌の乱れ !?

 このコラムは「赤ちゃんは泣くのが仕事」(2005年10月)と合わせてお読みください。

 いろいろと謎の多い夜泣きですが、その原因の一つとして最近、注目を集めているのが、腸内細菌叢のアンバランス。その鍵を握るのが、乳酸菌の一種であるロイテリ菌(ラクトバチルス・ロイテリ)です。

2016年3月27日

風邪薬はどれだけ効くか !?

 「リゾチーム製剤が市場撤退。追試に失敗。製薬会社が自主回収」… 2016年3月18日付の新聞の見出しです。リゾチーム製剤の商品名は、アクディーム、ノイチーム、レフトーゼなど。「気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症の喀痰喀出困難に効く」との触れ込みで販売され、風邪の治療にもしばしば用いられてきました。しかし、適応疾患を広げようとして再評価調査を行った結果、逆に「効かない」ことが実証されてしまい、承認を取り消さざるを得なくなったというお粗末な話です。当院はリゾチーム製剤の有効性に疑問をいだき、過去10年以上にわたって使用を控えていました。判断は間違っていなかったことになります。

2016年3月20日

保育園・幼稚園での感染症対策

 四月から入園を迎える皆様、おめでとうございます。新しい生活を始めるにあたり、親子共々に期待と不安が交錯する日々であろうと推察いたします。

 入園後間もなく、しばしば熱を出したり、咳が止まらなかったり、いつも鼻水を垂らしていたり … 風邪をひいてばっかり。「うちの子、こんなに弱かったかしら?」という状況が訪れますが、これはごく普通のこと。集団生活に入ると、これまでの家庭生活と比べものにならないほど、多種多様の病原体と遭遇します。風邪を引き起こすウイルスは約200種類あるといわれます。熱も咳も鼻水も、子どもが病原体と闘っている証です。一つ一つの風邪を乗り越えることによって、子どもはそれぞれの病原体に対する免疫を獲得し、次第に丈夫な身体になっていきます。

2016年1月11日

インフルエンザの疑問・誤解にお答えします(第二編)

 インフルエンザは普通のかぜと違う、重症化しやすいし死の危険さえある、だから一刻も早く医者にかかり検査を受けて薬を飲まなくてはならない、薬さえ飲んでおけばとりあえず安心、という概念が一般的です。しかし本当にそうでしょうか。一部は正しい認識ですが、大部分は過剰な不安にもとづく誤解といえます。その原因の多くは、恐怖心を執拗にあおりたてるメディアの報道やインターネットの書き込みにあります。今回のコラムで、インフルエンザに関する誤解の数々を解き、インフルエンザの知られざる一面に光を当てたいと思います。