2005年12月1日

解熱薬の使い方

 熱を出してフーフー言っている子どもを見るのはつらいことです。発熱に対してどのように向き合えばよいか、解熱薬をどのタイミングで使えばよいかを考えてみましょう。

 最初に、病気の重症度をチェックします。意識がおかしい、呼吸が苦しそう、顔色が真っ青、出血傾向がある、ぐったりして呼びかけに応じない、半日以上尿が出ない、生後3ヶ月以下 ⋯。これらの場合、とりあえず様子を見るのではなく、早急に医療機関に受診してください。


2005年11月1日

おしゃぶりは必要か?

 おしゃぶりの使用の是非について、日本小児科学会の公式見解が6月に発表されました。結論(勧告)の要旨を引用しますと …
「おしゃぶりは使用しない方がよいが、もし使用するなら歯の噛み合わせの異常などを防ぐために、以下の点に留意する。
 ① 言葉を覚える1歳を過ぎたら、おしゃぶりを常時使用しない
 ② 遅くとも2歳半までに使用を完全に中止する
③ 使用中も声掛けや遊びなど、子どもとの触れ合いを大切にする。子育ての手抜きとしての便利性だけで使用しない
④ 4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、小児科医に相談する」

2005年10月1日

夜泣きの対処法

 夜泣きとは、赤ちゃんが夜間に目覚めて泣き止まない状態をいいます。睡眠のパターンが完成するまでの一時的な生理現象であり、生後7~10ヶ月をピークに1歳半過ぎまでに自然に治りますが、養育者、とくに母親にとっては大変に悩ましい問題です。夜泣きへの具体的な対策を考えてみましょう。

2005年7月4日

日焼けはほどほどに

 筆者が少年だった頃、日焼けは健康のシンボルでした。夏の海辺でクロンボ大会が催され、皆で競い合って肌を焼いたものです。それほど昔でなくても、平成10年までの母子手帳には「外気浴や日光浴をしていますか」と記載されていましたし、今でも7割以上の人が「日焼けすれば身体が丈夫になる」と信じています。日光浴がかくも推奨される最大の理由は、日光に含まれる紫外線により体内でビタミンDが合成され、これがくる病(骨のミネラルが不足する病気)を防止する効果を持つためです。

 ところが、近年の栄養事情の改善とビタミンD摂取量の増加に伴ってくる病が激減し、代わって紫外線による皮膚癌の危険が実証されてくると、これまでの論調が一転して「日光浴は百害あって一利なし」と唱えられるようになりました。母子手帳から日光浴の字句が削除され、薬局には子ども用の日焼け止めが花盛りです。昨日の英雄が今日の悪玉に転落したかのようです。日光浴は有用か、それとも有害か、一体どちらが正しいのでしょうか!?

2005年4月11日

肥満はなぜいけないか

 「僕の家族はみんな太っているけど元気だよ。どうして太っていたら駄目なの?」 外来でときどき尋ねられる質問です。肥満とは標準体重からの偏りであって、それ自体は病気ではありません。しかし、肥満をそのまま放置しておくと、生活習慣病(いわゆる成人病)にかかる率が格段に高くなります。脂肪細胞から血液中に分泌される種々の生理活性物質(アディポサイトカイン)および遊離脂肪酸が、動脈硬化や血栓やインスリン分泌不全をもたらすことが発症の原因です。人生の早い時期から太っている人ほど身体の損傷が著しく蓄積し、より早い時期に生活習慣病を発症します。筆者の診療経験においても、10歳代で糖尿病、脂肪肝、高血圧、高脂血症を発症するケースを多々見かけます。将来の狭心症・心筋梗塞や脳卒中への進展が気がかりです。日本人小児の肥満の頻度は過去15年間に2倍近く増加し、今や10人に1人が肥満児の時代です。小児科医にとって肥満対策は緊急を要する課題の一つです。