おしゃぶりの使用の是非について、日本小児科学会の公式見解が6月に発表されました。結論(勧告)の要旨を引用しますと …
「おしゃぶりは使用しない方がよいが、もし使用するなら歯の噛み合わせの異常などを防ぐために、以下の点に留意する。
① 言葉を覚える1歳を過ぎたら、おしゃぶりを常時使用しない
② 遅くとも2歳半までに使用を完全に中止する
③ 使用中も声掛けや遊びなど、子どもとの触れ合いを大切にする。子育ての手抜きとしての便利性だけで使用しない
④ 4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、小児科医に相談する」
おしゃぶりは、家事で忙しい母親にはとても便利な道具です。利点として、簡単に泣き止む、スムーズに眠りに入る、母親の子育てのストレスが減る(居住環境によっては不可欠!?)、胃酸の逆流が減る、腹臥位で寝にくい、などがあげられます。ただし、おしゃぶりの宣伝文句に謳われている「鼻呼吸や舌・顎の発達を促す」は、現時点では学問的に実証されていません。
一方、おしゃぶりの欠点も多々あります。とくに、歯列・噛み合わせの異常と情緒面の弊害が重大です。おしゃぶりを使用すると、開咬(奥歯を噛んでも前歯が噛み合わない)と上顎前突(いわゆる出っ歯)の発症率が高くなります。これらは、おしゃぶりを2歳頃までに止めれば改善しますが、2~3歳以降も続けていると治りにくくなります。情緒面では、泣いている理由を考えずに使用する(子どもの欲求が分からない)、あやしたり声掛けしなくなる、子どもの発声や発語の機会を奪う、子どもが手指や物を口に入れて遊べない(協調運動の発達を妨げる)などが問題です。ほかに、中耳炎や口腔カンジダ症にかかりやすい、母乳哺育が中止されやすい、なども欠点としてあげられます。
結論として、おしゃぶりには利点よりも欠点の方がやや多いようです。おしゃぶりをできるだけ使用しない、やむを得ない場合は必要なときだけ使用して早期の終了を目指す、習慣化はしない、などの配慮が必要です。当クリニックでも、よりよい子育てを支援したいと願っています。どうぞお気軽にご相談ください。