2005年10月1日

夜泣きの対処法

 夜泣きとは、赤ちゃんが夜間に目覚めて泣き止まない状態をいいます。睡眠のパターンが完成するまでの一時的な生理現象であり、生後7~10ヶ月をピークに1歳半過ぎまでに自然に治りますが、養育者、とくに母親にとっては大変に悩ましい問題です。夜泣きへの具体的な対策を考えてみましょう。

 まず、原因がないかどうか探しましょう。のどが渇いた、おなかが空いた、おむつが濡れている、暑い、あるいは寒い、騒がしい、衣服がきつい、などにより赤ちゃんが困っていたら、それを取り除いてあげることが先決です。湿疹やアトピーでかゆい時、中耳炎や腸重積で痛い時にも容易に泣き止みませんが、このような病的状態では普段と違う泣き方をするので、区別はさほど難しくありません。昼間にニコニコとよく遊び食欲もあれば、健康状態は良好といえます。

 原因がわからない場合(これがほとんどです)、添い寝をする、背中をさする、抱っこする、乳首をくわえさせる、はっきり起こして散歩に出るなど、一人一人の赤ちゃんに合う方法を見つけて、再び眠りに就くまで付き合うしかありません。最も大切なことは、母親が穏やかな気持ちでいることです。「心ゆくまで泣いていいよ」「とことん付き合ってあげよう」と優しい気持ちで赤ちゃんに接して安心感を与えると、夜泣きは徐々に軽減します。反対に、母親が困惑したりイライラしながらあやしても、赤ちゃんに不安が伝わるだけで、夜泣きはますます激しくなります。夜泣きは必ず治ることを信じて、大らかな気持ちで向き合ってください。

 抱き癖が自立心の育成を阻むという意見もありますが、筆者はそうは考えません。抱っこの原点は胎児を包み込む子宮です。抱っこされた赤ちゃんは、子宮の中と同じような温かさと心地よい揺れに身を任せます。抱っこにより愛着関係は強化され、赤ちゃんにとっては心の中の母親像が確立し、母親にとっては母性の発達が促進します。この時期の赤ちゃんは、大いに抱っこしてあやしてあげてください。
夜泣きは生活環境の影響を強く受けます。昼間にスキンシップをとりながら十分に活動させる、夕方(15時以降)の昼寝を避ける、入浴や授乳など寝る前に必ず行う習慣を決める、毎日一定の時刻が来たら部屋を暗く静かにして寝付かせる、などは良い睡眠の原動力になります。一日の生活リズムに乱れはないか、親の夜型生活に赤ちゃんを巻き込んでいないか、今一度見直してみてください。

 夜泣きを母親一人で抱えるのは大変です。母親の負担を軽くするには、家族、とくに父親の支援が欠かせません。母親の訴えに耳を傾けて共感し、「よく頑張っているね」とねぎらい、二人交替で赤ちゃんに対応するなど、母親の気持ちと体調にゆとりを持たせる工夫が大切です。育児サークルで子育て仲間を見つける、保育所の一時あずかりを利用して自分一人の時間を作る、などもストレスを軽減するには良い方法でしょう。

 それでも赤ちゃんの夜泣きが激しく、両親が精神的負担に耐えられない場合、漢方薬で赤ちゃんの高ぶった神経をなだめる手立てがあります。とくに「甘麦大棗湯」は甘草、ナツメ、小麦の成分からなり、赤ちゃんにも飲みやすく安全です。母子ともに服用することで、いっそうの効果を見ることもあります。夜泣きでお困りの方はどうぞご相談ください。