2008年11月4日

溶連菌って何!?

 溶連菌感染症は、子どもの咽風邪(のどかぜ)の約15~20%を占める、“ありふれた” 病気の一つです。迅速検査法により約10分で診断でき、抗生物質により大多数は1日で解熱します。しかし、原因菌がよく判らず治療法が不十分であった前時代には、リウマチ熱や急性腎炎を続発する重い病気と考えられ、法定伝染病の指定にもとづき患者は隔離されていました。診断と治療が容易になり伝染病の扱いが格下げされた現在でも、保育園・幼稚園・学校などでは過剰に(異常に?)恐れられています。今回のコラムでは、溶連菌を正しく理解するための知識をお届けいたします。

2008年10月1日

経口補水療法は「飲む点滴」

 急性胃腸炎は、消化管に病原体が侵入することで、吐いたり下痢をする病気です。消化管が未熟な乳幼児では、激しい下痢や嘔吐が続いた末に、体内から水分と塩分が失われて脱水に陥ることがよくあります。脱水をいかに防ぐかが、急性胃腸炎の治療のポイントです。ノロウイルスやロタウイルスが流行する時期に先がけて、脱水の防止法を学びましょう。

2008年9月7日

ワクチンで防げる病気

 わが国の小児医療は世界の中で最高水準を誇っていますが、ワクチンで防げる病気(VPD)の排除・制圧にかぎっては大きく遅れをとっています。先進国中、最低の水準です。ワクチンの普及を妨げる最大の要因は、「ワクチン=副作用が怖い」という思い込みでしょう。病気には自然にかかる方がよいという誤解、効果への疑問、接種に要する費用の高さ、わが国で接種可能なワクチンの種類の少なさ、なども要因にあげられます。ある調査では、7割を超える保護者が「任意接種は必ずしも受けなくてよい」と答えています。

2008年8月3日

熱中症を防止しよう

 連日の猛暑の中で、熱中症にかかる人が続出しています。熱中症とは、高温多湿の環境下で発症する障害の総称です。血圧低下と脳血流の減少で起こる「熱失神」、脱水による頭痛、めまい、吐き気、倦怠感などの「熱疲労」、脱水に加えて塩分の補給不足で起こる四肢筋や腹筋の「熱けいれん」、体温の調節機能が破綻して脳神経の働きが失われ、ときに死に至る「熱射病」の各病型があります。

2008年7月6日

急増する百日咳

 百日咳は、主に乳幼児の間で流行する呼吸器感染症です。1歳未満の乳児が百日咳にかかると生命に危険が及ぶため、古来よりワクチンによる制圧が進められてきました。現在、三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳 = DTaP)の接種率は95%を超え、百日咳にかかる乳幼児の数は激減しています。ところが、数年前から成人の間で百日咳の報告が増え始め、乳幼児への影響が懸念される事態に陥っています。昨年、四国の2大学で百日咳の流行的多発がみられたことは、皆様のご記憶にもあることと思います。

 なぜ成人の百日咳が増えているのでしょうか。百日咳に対するワクチンの免疫効果は5~10年で減衰します。そのため、成人になると百日咳にかかりやすくなる人がいます。さらに「成人も百日咳にかかることがある」という認識が世の中に広まり、これまで見逃されていたケースが正しく診断されるようになりました。百日咳は決して過去の病気ではありません。

 海外でも1990年代から、成人における百日咳の増加が問題になっていました。そのため、米国、カナダ、フランス、ドイツなどは、10代の青年に対する改良型・三種混合ワクチンの追加接種を数年前から実施しています。しかし日本は、百日咳を除いた二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風)を11~12歳時に追加接種する、従来の方式にとどまっています。百日咳ワクチンが除かれる理由は、現行のワクチン0.5mlを青年や成人に接種すると、注射部位の発赤や腫脹などの副反応が強く現れやすいことです。第二の理由は、成人が百日咳にかかっても自身の生命が脅かされる危険性はきわめて低いからです。

 上記の欧米諸国では、百日咳ワクチンの副反応を減じた改良型ワクチン(Tdap)が開発され使用されています。しかし日本では今のところ、Tdapの製造も輸入も予定されていません。おそらく今後も早急な対応はなされないだろうと悲観しています。

 成人の百日咳が重症化しなくても、それをうつされた乳幼児は大変です。特にワクチン未接種の子どもが百日咳にかかると、顔を真っ赤にして「コンコンコンコン」と立て続けに咳き込み(スタッカートと称します)、その後に「ヒューッ」と音をたてて息を吸い込む動作をします(ウープと称します)。激しい咳き込みのために顔はむくみ、点状出血斑が顔や上半身に現れます。無呼吸発作を起こして命を落とすケースもあります。肺炎や脳症の合併例もときに見られます。百日咳は乳幼児にとって恐ろしい病気です。昨年の米国小児感染症学会誌によりますと、乳幼児の百日咳の感染源の70%は両親や親戚など身内の成人です。成人の予防措置と発症したときの早期診断・治療は緊急の課題といえます。

 成人の百日咳は、乳幼児ほど重くならず、典型的なスタッカートやウープはほとんど生じません。熱も出ません。血液検査を行っても、かかっているかどうか曖昧なケースさえあります。百日咳を疑う手がかりは、2週間以上の長引く咳に加えて、突然の激しい咳き込み、咳き込みによる嘔気・嘔吐などです。元気があるからと言って咳を長らく放置せずに、必ず医療機関を受診しましょう。特に子どもと接する機会の多い方は、ご自身の健康だけでなく子どもの健康にも留意すること、つまり「感染源にならない」配慮が強く求められます。

2008年6月11日

夏の健康管理

 夏かぜの季節が始まりました。不思議なことに、夏かぜという言葉はあっても、冬かぜという言葉は聞きません。夏かぜには「暑い季節にかぜをひくなんて」とか「まあたいしたことはなかろう」というニュアンスが込められているような気がします。しかし夏かぜといえどもまれに重症化することがあり、決して油断はできません。また、夏かぜばかりでなく、食中毒や皮膚の病気や不慮の事故など、夏には子どもの健康をそこなう要因が数多く潜んでいます。夏は子どもの健康管理において重要な季節です。

2008年5月11日

子どもの睡眠を見直そう

 「寝る子は育つ」と昔から言われてきたとおり、子どもの健やかな成長と睡眠の間には密接な関連があります。しかし子どもを取り巻く生活環境は、過密なスケジュール、身体を使う外遊びの減少、メディアやゲーム機の普及、生活の夜型化など、睡眠時間の大幅な減少をもたらす状況ばかりです。日本の子どもの睡眠時間は減少の一途をたどり、今や先進国の中で最も短くなってしまいました。

2008年4月7日

離乳食の新指針

 昨年3月に厚生労働省から「授乳・離乳の支援ガイド」が発表されました。平成7年の「離乳の基本」から12年ぶりの改訂です。新しくなった指針をもとに、私見を交えながら、離乳食の基本の幾つかを解説いたします。

2008年1月20日

花粉症の対策

 今年も春季カタルが始まりました。今や国民の5~10人に1人が悩まされているスギ・ヒノキ花粉症。この厄介な病気にどのように向き合えばよいでしょうか。

<アレルギーとは? 花粉症とは?>
 アレルギーとは、ある特定の物質に対して過敏に反応する現象です。アレルギーを起こす物質をアレルゲンとよびます。花粉症におけるアレルゲンの代表はスギ花粉です。スギ花粉症は日本人に特有で、近年かかる人が急増しています。増加の原因として、スギの植林政策、大気汚染、食生活や住宅環境の変化が挙げられます。スギ以外にも40~50種類の植物による花粉症が知られています。ヒノキ、シラカバなどの樹木花粉、カモガヤ、ブタクサなどの雑草花粉が代表です。花粉症はアレルギー体質の人だけがかかるのではなく、元来健康な人でも毎年花粉を浴び続けているとかかることがあります。

2008年1月1日

かぜの撃退法

 インフルエンザや風邪が流行しています。目に見えないこれらの病原体は、どのようにして人から人にうつるのでしょうか。その仕組みを紹介することで、病原体からわが身やわが子を守り、病原体を他人にうつさない方法を、皆様に知っていただきたいと思います。