「寝る子は育つ」と昔から言われてきたとおり、子どもの健やかな成長と睡眠の間には密接な関連があります。しかし子どもを取り巻く生活環境は、過密なスケジュール、身体を使う外遊びの減少、メディアやゲーム機の普及、生活の夜型化など、睡眠時間の大幅な減少をもたらす状況ばかりです。日本の子どもの睡眠時間は減少の一途をたどり、今や先進国の中で最も短くなってしまいました。
睡眠が不足すると、子どもの身体にさまざまな悪影響が現れます。まず、脳が休息できなくなり、情緒が安定せず集中力や注意力が低下します。睡眠時間を削って勉強しても成績が上がらないことは、さまざまな研究で証明済みです。また、身体にも不都合を生じます。自律神経系には、昼間起きている間に身体を活発に動かす交感神経と、夜間リラックスしている間に働く副交感神経があります。睡眠が不足したり不規則だったりすると自律神経系のリズムが崩れて、体温や血圧や心拍数など身体の重要な調節系が乱れます。その結果、体調はすぐれず元気は出ません。さらに、成長ホルモンの分泌が夜間睡眠時に増加することから、睡眠の不足が成長障害の遠因になる可能性も指摘されています。
人には生体時計が備わっています。脳の視床下部という部分にあり、神経細胞と睡眠物質(メラトニンなど)によって作動しています。地球の1日は24時間ですが、生体時計の1日は25時間です。人は毎朝、太陽の光を浴びることで生体時計の周期を短くして、地球時間に合わせています。ところが毎晩夜ふかしをして明るい場所で過ごしていると、いつの間にか生体時計の周期が25時間よりも長くなり、地球時間とのズレが大きくなります。このズレが増すほどに昼夜の区別ができなくなり、慢性の時差ぼけ状態に陥ります。これが脳の発達によくないことは明らかです。
質の良い睡眠を得るために、家庭環境を今一度見直してみませんか。生活のリズムを整える際に最も大切なことは、早寝よりもまず早起きです。朝のまぶしい陽光の中で、子どもを起こしましょう。朝ごはんをしっかり食べさせて、日中は元気に活動させましょう。昼寝を必要とする子と必要でない子がいますが、昼寝をする場合でも午後3時頃までには切り上げましょう。夕食と入浴の時間が就寝直前にならないように段取りをしましょう。寝る時間になったら、部屋の照明を暗くしましょう。日中にしっかり活動して疲れれば、自然と早寝になります。子どもの生活習慣の基本は「よく身体を動かし、よく食べ、よく眠る」ことです。それでも寝つきが悪い子どもには ”入眠儀式” が有効です。たとえば、パジャマに着替える、子守唄を歌う、絵本を読み聞かせる、枕元にぬいぐるみを置くなど、子どもが気に入る儀式を一緒に考えてあげましょう。親御さんの仕事によっては夜遅く帰宅する場合もあるでしょうが、子どもを大人の生活リズムに巻き込まず、子どもの生活空間と時間をしっかり確保してあげてください。子どもとのスキンシップは、真夜中ではなく朝の光の中で行いましょう。子どもの眠りについてもっと詳しく知りたい方には、早起きサイト(http://www.hayaoki.jp)をお勧めいたします。