夏かぜの季節が始まりました。不思議なことに、夏かぜという言葉はあっても、冬かぜという言葉は聞きません。夏かぜには「暑い季節にかぜをひくなんて」とか「まあたいしたことはなかろう」というニュアンスが込められているような気がします。しかし夏かぜといえどもまれに重症化することがあり、決して油断はできません。また、夏かぜばかりでなく、食中毒や皮膚の病気や不慮の事故など、夏には子どもの健康をそこなう要因が数多く潜んでいます。夏は子どもの健康管理において重要な季節です。
夏かぜを起こす主な病原体は、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、アデノウイルスです。これらのウイルスが起こす代表的な病気をあげてみましょう。
[1] ヘルパンギーナ
原因はコクサッキーウイルスやエコーウイルスです。発熱と口の中の水疱が特徴です。水疱のために口の中が痛くなり食欲が落ちます。数日以内に治ります。
[2] 手足口病
原因はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスです。手のひら、足の裏、口の中などに水疱が現れます。発熱を伴うケースは三分の一です。数日以内に治ります。
[3] 咽頭結膜熱
原因はアデノウイルスです。高熱と目・のどの発赤が特徴です。熱は約3~7日続いた後、自然に下がります。プールでうつされやすいのでプール熱ともいいます。
以上の病気に共通する特徴は、飛沫感染または接触感染でうつること、咳や鼻水はほとんど出ないこと、抗生物質が効かないこと、数日の経過で自然に治ること、熱のわりには元気が保たれること、しかしきわめてまれに脳炎・心筋炎・重症肺炎などを続発することです。したがって、元気がまったくなく動こうともしないとか、とろとろ寝てばかりで起こしても起きないとか、いつもと違って変だ!と感じられたら早めの受診をお願いいたします。
夏は食中毒の季節でもあります。注意しなければならない食材は、牛肉(とくに挽き肉)、鶏肉、卵、生魚などです。これらを調理した包丁やまな板も要注意で、危ないと感じたら加熱滅菌しましょう。さらに、調理する手指をよく洗うこと(傷があるときはとくに注意)、加熱した食物をとること、加熱後は内部まで十分に冷却してから冷蔵庫に保管すること、しかし貯蔵はなるべくしないこと、などが食中毒を防止するための工夫です。
夏には皮膚の病気が増えます。中でも伝染性膿痂疹(とびひ)が目立ちます。あせもや虫さされで掻き傷を作りやすい上に、高温多湿で菌が増殖しやすいためです。日頃から肌の清潔を保つことでとびひを防ぎましょう。
夏に多い事故として、熱中症、溺水、怪我があげられます。それぞれの防止法は別稿に譲りますが、暑い屋外で遊ぶときは適度の休憩と水分・塩分の補給を心がけること、また川や海で遊ぶときは監視を怠らないことを、保護者の方々にお願い申し上げます。わが国における1~14歳の死因の第一位が事故であり、夏はその発生件数が大幅に増えると思われます。