2014年10月22日

かぜ診療は子育て支援  〜 かぜ診療を再考する 〜

 暑い夏が去り、空気が冷たく乾燥してくると、“かぜ” の季節が始まります。かぜとは、鼻からのど(咽頭、喉頭)までの上気道に病原体が付着することで起こる急性炎症です。かぜを起こす病原体は200種類以上あり、その9割をウイルスが占めます。秋になるとライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、年が明けるとインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、春になると再びライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、夏にはアデノウイルス、エンテロウイルスなどがそれぞれ流行します。まるで季節の風物詩のように順繰りに必ずやって来ます。残りの1割は細菌(マイコプラズマ、クラミジア、溶連菌など)です。マイコプラズマは主に秋から冬にかけて流行します。溶連菌の流行は通年性ですが、夏は少なくなります。

2014年10月8日

スキンケアはアレルギー全般の予防に有効か !?

 赤ちゃんの肌はとてもデリケートです。皮膚が薄く、皮脂の分泌量が少なく、角質層を構成するセラミドが少ないため、皮膚のバリア機能が十分ではありません。汗、垢、食べこぼし、微生物などの外的な刺激を受けると損なわれやすく、乾燥肌や湿疹を容易に生じます。これらの皮膚病変によりバリア機能が低下すると、ダニや食物などのアレルゲンが皮膚を通過しやすくなり、アレルギー感作の危険性が増します。近年、食物アレルギーの成立過程は、食物を摂取して消化管を通る経路よりも、皮膚から直接侵入する経路(経皮感作)の方が重要と考えられています。加水分解小麦を含む「茶のしずく石鹸」が小麦アレルギーを誘発した事件(2011年)をご記憶の方もいらっしゃると思います。

2014年9月7日

喘息性気管支炎という厄介な病気

 暑い夏が過ぎ去った途端、喘鳴(ゼーゼー)や激しい咳き込み(ゲホゲホ)を起こす乳幼児が増えてきました。喘息性気管支炎の流行期の到来です。今回のコラムでは、気管支喘息と紛らわしく混同されがちな喘息性気管支炎について解説いたします。

2014年8月7日

マラソン放浪記 第二編

 2014年2月に憧れの東京マラソンを完走し、ランニングの熱中度がいっそう高まりました。その後も診療の合間をぬって、日本各地の大会を行脚しています。放浪記の第二編をお届けいたします。ランニングの楽しみを身近に感じていただけると幸いです。

2014年7月6日

髄膜炎を予防するワクチン二種の絶大な効果

 細菌性髄膜炎(以下、髄膜炎)は恐ろしい病気です。普段は鼻や喉にいる細菌が血液に侵入することがあり、それが脳を包む髄膜に取り付くと、最終的には脳そのものに病気を起こします。髄膜炎を発症すると、医学の進んだ現在においても、死亡率3〜5%、後遺症率20〜25%という厳しい数字が並びます。髄膜炎を防ぐワクチンが導入される前の日本では、一年間に約千人の子どもが髄膜炎に罹っていました。そのうち、ヒブによる髄膜炎が約600人、肺炎球菌による髄膜炎が約200人。二つの細菌による髄膜炎で亡くなる子どもが約50人いました。

2014年5月7日

水痘ワクチンの定期接種化(2014年10月から)

 水痘は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染で生じる病気です。VZVの感染力は非常に強く、空気・飛沫・接触などの様式で広く伝播します。家庭内の感染率は80〜90%です。主な症状は、軽度の発熱と全身の水疱疹です。水疱疹の数は250〜500個。約1週間で痂皮化して治癒に至ります。しかし、VZVは知覚神経に生涯にわたって潜伏し、免疫能が低下した時に帯状疱疹を起こします。1歳半頃までに水痘にかかると、後々に帯状疱疹を発症しやすくなります。

2014年4月7日

ペットとアレルギー疾患

 「ペットを飼いたいけどアレルギーが心配で …」という声をよく聞きます。診療中に質問を受ける場面も多々あります。今回は、アレルギー疾患を持つ子どもがペットを飼ってよいかどうかを考えてみましょう。

2014年3月8日

誤解の多い!? アトピー性皮膚炎 (2)

 前回のコラムで、アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用薬の有効性と安全性を述べました。もう少し具体的に使用量を説明しますと、小児で、中等度から弱めのステロイド外用薬を1日1本まで、4週間以内であれば、副作用が現れることはまずありません。実際にそんなに長く多く使うことはなく、乳児で3〜5日間、幼児で1週間きちんと塗れば、皮膚炎は改善し、以後は使用量を減らすことができます。もし変化がないとしたら、薬が弱すぎるか、副作用を恐れるあまり使用量が足りていないか、いずれかです(後者が多いと思われます)。ステロイド外用薬で早期に強力に治療し改善したら減量・中止する、その後は保湿剤などで良好な状態を維持する … これがアトピー性皮膚炎に対する治療の基本です。効果が不十分な薬をだらだら塗るよりも、しっかり効く薬を塗ってさっさと終わらせましょう。

2014年3月2日

東京マラソン2014 完走記

 2月23日、「東京マラソン2014」にチャリティーランナーとして出場しました。54歳の遅咲きデビューでランニングの世界に入ったきっかけが、東京マラソンに出てみたいという少年のような純粋な?願望。以来、地道な練習を続け、各種大会で経験を積み、ついに2年4ヶ月を経て、あこがれの舞台に立つことができました。当日の模様をお伝えします。

2014年2月20日

誤解の多い!? アトピー性皮膚炎 (1)

 アトピー性皮膚炎は、長い付き合いを要する病気(または体質)です。適切な治療により皮膚の状態を良好に保つことはできますが、短期間で病気(体質)そのものを完治させることは困難です。ただし多くの場合、子どもの成長とともに自然に良くなっていきます。

 アトピー性皮膚炎の治療法の基本は、(1) 皮膚炎に対してステロイド外用薬(塗り薬)を十分に使用する、(2) 皮膚炎が改善した後は皮膚の清潔と保湿に努め(保湿薬も使用し)、皮膚炎が再燃した時だけステロイド外用薬を使用する、の二点です。近年、治療薬として、ステロイド外用薬の他にプロトピック軟膏も用いられています。しかし、ステロイド外用薬に対する誤った理解がしばしば先行し、正しい治療の妨げになっています。

2014年1月22日

マラソン放浪記  〜 走る楽しみを求めて 〜

 昨年(2013年)4月に霞ヶ浦でフルマラソンを初めて完走しました。以来9ヶ月間、日本の各地に出向いてマラソン大会に出場しています。マラソン行脚の日々です。中でも印象に残った大会を幾つか皆様にご紹介いたします。マラソンの楽しみを身近に感じていただけると幸いです。