2014年5月7日

水痘ワクチンの定期接種化(2014年10月から)

 水痘は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染で生じる病気です。VZVの感染力は非常に強く、空気・飛沫・接触などの様式で広く伝播します。家庭内の感染率は80〜90%です。主な症状は、軽度の発熱と全身の水疱疹です。水疱疹の数は250〜500個。約1週間で痂皮化して治癒に至ります。しかし、VZVは知覚神経に生涯にわたって潜伏し、免疫能が低下した時に帯状疱疹を起こします。1歳半頃までに水痘にかかると、後々に帯状疱疹を発症しやすくなります。

 水痘は軽い病気と思われがちですが、皮膚の二次細菌感染、脳炎、小脳失調、肺炎、肝炎などを併発することが稀にあります。また、免疫不全の人が水痘にかかると重症化し、死に至る場合があります。妊婦が妊娠20週頃までにかかると、出生児の約2%が先天性水痘症候群を発症します。分娩5日前から分娩2日後の間にかかると、重篤な新生児水痘をきたします。

 日本における水痘罹患者数は年間100万人です。その中の4000人が重症化や合併症により入院し、20人が死亡していると推定されています。日本では麻疹による死亡数がゼロに迫っており、水痘による死亡数の方が多いことになります。水痘を「軽い病気」と侮ってはいけません。

 水痘ワクチンは、日本が世界に先がけて開発したワクチンです。1歳以上の子どもに接種できます。安全性が高く、副作用はほとんどありません。外国でも日本製のワクチンが使用されています。米国は1996年に世界初の定期接種化に踏みきり、水痘患者数を著しく減少させることに成功しました。ドイツなど欧州諸国でも、定期接種化による水痘の征圧が始まっています。

 日本では1987年にワクチンが発売されて以来、現在に至るまで任意接種の扱いに留まっています。接種率は、発売後十数年間20%前後で推移しましたが、その後徐々に上昇して近年40%台に達しています。しかし未だ水痘患者数の減少には至っていません。接種率のさらなる向上が必要です。さいわい、2014年10月から水痘ワクチンが定期接種化されることになりました。この機会にワクチンへの関心をより高めていただきたいと思います。

 日本で実施される水痘ワクチンの定期接種は、1〜2歳児が対象で、3ヶ月以上の間隔で2回接種します。過去に一度も接種したことのない3〜4歳児にも、平成26年度中に限り、1回の接種機会が提供されます。ただし上記は実施案の段階で、正式の決定は7月頃の見込みです。

 かつて水痘ワクチンは1回接種で十分と考えられていました。しかし、ワクチン接種後に水痘にかかる現象(ブレークスルー水痘)が接種者の20〜30%に起こることが、その後の研究で判明しました。ブレークスルー水痘のほとんどは軽症で済みますが、それだけに診断が難しい場合があり、保育園など集団生活で流行の原因になることが問題視されています。ワクチンを2回接種して十分な免疫を獲得することにより、ブレークスルー水痘を予防することが可能です。1回接種で終わらせず、2回接種をお勧めいたします。

 水痘ワクチンは1歳未満児には接種することができません。ワクチンを接種できない子どもを水痘から守るためにも、対象年齢に達している子どもは積極的にワクチンを接種していただきたいと思います。