食物アレルギーの病態はこれまで十分に解明されておらず、その対処法は手探りに近い状態でした。最新の研究により、従来 “常識” とされてきた通説が次々にくつがえされ、食物アレルギーの医療に大転換が起きています。たとえば、根拠が見いだされず完全否定された “都市伝説” として、(1) 妊娠中や授乳中の母親が食物を除去すると、子どもは食物アレルギーになりにくい、(2) 離乳食の開始を遅らせたり特定の食物を除去したりすると、子どもは食物アレルギーになりにくい、があげられます。先回りして食物を除去しても、食物アレルギーの発症を予防することはできません。食物を摂取しないと ”経口免疫寛容” というアレルギー阻止機構が誘導されず、食物アレルギーがむしろ促進されます。「卵や乳製品は1歳過ぎまで待ちましょう」は、誤りであるばかりか逆効果だったわけです。離乳食を始めたら、早い時期から一種類ずつ様々な食物を試すことが食物アレルギーの予防につながります。ただし食物アレルギーを心配する場合、最初の一口は耳かき一杯程度の少量から、という慎重さは必要でしょう。