食物アレルギーの病態はこれまで十分に解明されておらず、その対処法は手探りに近い状態でした。最新の研究により、従来 “常識” とされてきた通説が次々にくつがえされ、食物アレルギーの医療に大転換が起きています。たとえば、根拠が見いだされず完全否定された “都市伝説” として、(1) 妊娠中や授乳中の母親が食物を除去すると、子どもは食物アレルギーになりにくい、(2) 離乳食の開始を遅らせたり特定の食物を除去したりすると、子どもは食物アレルギーになりにくい、があげられます。先回りして食物を除去しても、食物アレルギーの発症を予防することはできません。食物を摂取しないと ”経口免疫寛容” というアレルギー阻止機構が誘導されず、食物アレルギーがむしろ促進されます。「卵や乳製品は1歳過ぎまで待ちましょう」は、誤りであるばかりか逆効果だったわけです。離乳食を始めたら、早い時期から一種類ずつ様々な食物を試すことが食物アレルギーの予防につながります。ただし食物アレルギーを心配する場合、最初の一口は耳かき一杯程度の少量から、という慎重さは必要でしょう。
[2] 発症機序について
食物アレルギーは、食物を摂取することで起こると信じられていましたが、皮膚を通して食物成分が体内に入る経路が主役であることが明らかにされました。食物アレルギーは皮膚から起こるのです。消化管から吸収される食物は、異物ではあるけれども身体に役立つものとして受容され、免疫の過剰反応を起こしません(経口免疫寛容)。一方、皮膚を通して体内に入る食物は、異物として排除する方向に免疫が強く誘導されます(経皮感作)。経皮感作の一例は「茶のしずく石鹸」の事件です。加水分解小麦タンパクを含む石鹸を使用することで小麦アレルギーを発症する健康被害が続出しました。最新の研究により、乳幼児期に湿疹のある子どもは、湿疹のない子どもに比べて、食物アレルギーを高頻度に発症することが知られています。湿疹(皮膚のバリア機能が低下した部位)を通して、食物成分が体内に侵入するためです。スキンケア(保湿薬ならびにステロイド外用薬の正しい使用)により湿疹を解消して皮膚を綺麗に保つことは、経皮感作の経路を遮断して食物アレルギーを防止することに直結します。
[3] 診断、治療について
食物アレルギーが心配な場合(たとえば、何かを食べたら口の周囲が赤くなる)、血液や皮膚検査で原因食物を推定し、その摂取を制限する対処法が長らく採られてきました。しかしこの方法も現在は否定されています。第一に、血液や皮膚検査の信頼度は必ずしも高くなく、これだけを根拠に食物アレルギーと診断してはいけません。参考程度にとどめるべきです。最終的な診断確定は、問診ならびに食物除去/再負荷試験に基づきます。第二に、アナフィラキシーなど重篤な症状を呈する場合を除き、完全除去はせずに、医師の指示下で “食べられる範囲” を設定して少量ずつ食べ続けることが、アレルギーの伸展防止と改善に結びつきます。原因食物と判定されても、必要最小限の除去にとどめ、「食べて治す」ことを目指します。どのくらい食べてもよいかは、かかりつけ医と相談して決めて下さい。食べられる範囲を正確に知るために食物負荷試験を利用する手段もあります。アレルギー症状が強く現れる場合に実施を考慮してもよいでしょう。
[3] 診断、治療について
食物アレルギーが心配な場合(たとえば、何かを食べたら口の周囲が赤くなる)、血液や皮膚検査で原因食物を推定し、その摂取を制限する対処法が長らく採られてきました。しかしこの方法も現在は否定されています。第一に、血液や皮膚検査の信頼度は必ずしも高くなく、これだけを根拠に食物アレルギーと診断してはいけません。参考程度にとどめるべきです。最終的な診断確定は、問診ならびに食物除去/再負荷試験に基づきます。第二に、アナフィラキシーなど重篤な症状を呈する場合を除き、完全除去はせずに、医師の指示下で “食べられる範囲” を設定して少量ずつ食べ続けることが、アレルギーの伸展防止と改善に結びつきます。原因食物と判定されても、必要最小限の除去にとどめ、「食べて治す」ことを目指します。どのくらい食べてもよいかは、かかりつけ医と相談して決めて下さい。食べられる範囲を正確に知るために食物負荷試験を利用する手段もあります。アレルギー症状が強く現れる場合に実施を考慮してもよいでしょう。