インフルエンザや風邪が流行しています。目に見えないこれらの病原体は、どのようにして人から人にうつるのでしょうか。その仕組みを紹介することで、病原体からわが身やわが子を守り、病原体を他人にうつさない方法を、皆様に知っていただきたいと思います。
インフルエンザや風邪の感染経路は二通りあります。一つは咳やくしゃみによる「飛沫感染」です。飛沫とは、鼻や口から飛び出す細かい水滴のこと。風邪をひいている人の飛沫の中には、病原体が多量に含まれています。咳やくしゃみ、あるいは会話の際に飛沫を浴びると、病原体も一緒に飛び込んできます。もう一つは「接触感染」です。風邪をひいている人が鼻や口をいじると、病原体が手に乗り移ります。その手に触れられた物は、病原体で汚染されます。汚染された物体に触れた手で目をこすったり鼻や口をさわると、病原体が体内に侵入します。感染経路にはもう一つ「空気感染」があります。これは病原体が空気に乗って伝播する様式で、飛沫を直接浴びなくても空気を吸うだけで感染します。ただし、空気感染する病原体は、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、結核に限られます。飛沫感染と空気感染は混同されがちですが、実態はまったく別物です。インフルエンザや風邪は空気感染しないので、同じ部屋にいるだけでうつされる危険はありません。
では、飛沫感染を防ぐにはどうすればいいでしょうか。飛沫はせいぜい1メートルしか飛ばないので、風邪をひいている人と接する時に、お互いがマスクを着けて1~2メートルの距離を保っていれば、病原体のやり取りはまず起こりません。マスクは飛沫の拡散を防ぎ、飛沫の侵入を防ぐのに役立ちます。さらに、呼吸する空気の湿度と温度を高めることで、鼻やのどの粘膜を保護する作用もあります。風邪をひきたくない人にも、すでにひいてしまった人にも、マスクは便利な小道具です。咳やくしゃみをしているわが子をお連れの際には、マスクの着用をぜひお勧めします。残念ながら、世の中のすべての人が感染防止策を心得ているわけではないので、外出時は人ごみをできるだけ避ける方が無難です。
次に、接触感染を防ぐ方法はどうでしょうか。さまざまな物に付着した病原体は、数時間は生きていて感染力を有します。手が病原体の ”運び屋” になるわけですから、外出時にあれこれ触って汚染された後の手洗いは非常に重要です。手をやたらに目、鼻、口にもっていかない習慣付けも大切で、マスクの着用はこの点でも役に立ちます。風邪をひいてしまった人は、咳やくしゃみを押えた手や鼻をかんだあとの手(病原体がたくさん付いています!)をよく洗いましょう。待合室で椅子や床、絵本やおもちゃなどを汚してしまったら、消毒いたしますのでスタッフに声をおかけください。
さらに基本的な防御策は体調管理です。バランスのよい食事をとり、湯冷めや寝冷えを避け、十分な睡眠時間を確保することで、病原体に付け入る隙を与えない身体を作りましょう。インフルエンザに関しては、ワクチンによる予防も可能です。あの手この手を駆使して病原体を撃退し、インフルエンザや風邪の流行期を無事に乗り切りたいですね。