2005年12月1日

解熱薬の使い方

 熱を出してフーフー言っている子どもを見るのはつらいことです。発熱に対してどのように向き合えばよいか、解熱薬をどのタイミングで使えばよいかを考えてみましょう。

 最初に、病気の重症度をチェックします。意識がおかしい、呼吸が苦しそう、顔色が真っ青、出血傾向がある、ぐったりして呼びかけに応じない、半日以上尿が出ない、生後3ヶ月以下 ⋯。これらの場合、とりあえず様子を見るのではなく、早急に医療機関に受診してください。


 重症でないと判断できたら(大部分の発熱が該当します)、状況に応じて解熱薬を与えて構いません。解熱薬は頓用が基本で、定時の服用はしません。小児で最もよく用いられるのはアセトアミノフェン(アンヒバ、アルピニー、カロナール、コカール、パラセタなど)です。投与後3~4時間で最大効果が得られ、8~12時間にわたって有効です。坐剤と経口薬(シロップ、細粒、錠剤)の比較では、経口薬のほうが若干早く効きます。間隔を6時間以上あけて、1日2回を限度として、適切に与えてください。他に小児で用いられるのは、イブプロフェン(ユニプロン、ブルフェンなど)だけです。

 上記2種以外の解熱薬は原則として小児に使用しません。アスピリンはライ症候群との関連があるため、特にインフルエンザと水痘(みずぼうそう)には使用禁です。メフェナム酸(ポンタール)とジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)はインフルエンザ脳症との関連が指摘されていて、使用が厳禁されています。他の解熱薬も過度の低体温や肝障害を起こす危険があります。成人の解熱薬を小児に流用することはやめてください。

 そもそも発熱は病原体の繁殖を抑える生体防御反応であり、解熱薬の使用は病気の回復を遅らせる、という意見があります。筆者は、高熱でつらそうなときは解熱薬で一時的に楽にしてあげて、その間に水分を補給したり安眠させて体力の消耗を防ぐのは良いこと、と考えています。高熱の定義は38.5~39℃以上です。これ以上の熱があっても辛そうにしていなければ(食欲、遊び、睡眠が保たれているなら)、無理に熱を下げる必要はありません。高熱のままでも大丈夫です。なお、解熱薬で熱を下げても病気が治ったわけではなく、あくまでも一時しのぎであることを忘れないでください。

 寒そうに震えて手足の先が冷たく青いのは、これから熱が上がる兆候です。毛布などでほんの少し暖めるといいでしょう。熱が上がりきると今度は赤い顔をして暑そうにしますので、毛布や布団の枚数を減らしてあげましょう。衣服の着せすぎはよくありません。頭や腋窩(わき)や脚の付け根を冷やすと気分がよくなります。ただし、子どもが嫌がるようなら無理に行う必要はありません。浣腸すると熱が下がるという民間療法は広く流布していますが、熱が下がるよりも熱に伴う頭痛を軽くすることに若干の効果があるようです。

 「高熱が続くと頭が悪くなる」という言い伝えがあります。たしかに41℃を超えると脳障害を生じる可能性がありますが、人間の体温は限りなく上がらないように脳で調整されています。通常の病気ではそのようなことは起こりません。ただし、高熱の原因が脳に存在する病気(髄膜炎、脳炎、痙攣重積など)と体温調節機能そのものが損なわれる病気(熱中症、熱射病)では注意が必要です。最初に述べた「重症度が高いことを示す徴候」があれば、早めに医療機関に受診してください。

 インフルエンザの流行期をひかえて、このコラムが親御さんの参考になればさいわいです。子どもの発熱を上手に切り抜けましょう。

(2012年9月8日 一部改訂)