2006年12月30日

アレルギー疾患の増加

 気管支喘息にかかっている幼稚園児や小中学生の割合が10年間で倍増し、過去最高を更新したことが、文部科学省の学校保健調査(平成18年度)で明らかにされました。喘息児の割合は、幼稚園2.4%、小学校3.8%、中学校3.0%、高校1.7%にのぼっています。また、今年度から調査項目に加えられたアトピー性皮膚炎の割合は、幼稚園3.8%、小学校3.6%、中学校2.8%、高校2.2%です。他の調査結果と合わせて見ると、アレルギー疾患すべて(花粉症や食物アレルギーも含めて)が増加していて、おおよその有病率は5~15%と推測されます。当クリニックにおいても、これとほぼ同じ傾向が認められます。

 わが国でアレルギー疾患が増えている背景には、さまざまな理由が考えられています。最も代表的な要因は、① 居住空間の変化[ダニやカビが繁殖しやすい密閉性の高い住宅]、② 食生活の変化[欧風化に伴う、卵白・乳製品・小麦・ナッツ類など、従来の和食にない食材の普及]、③ 大気汚染[排気ガス、スギ花粉など]の三つです。さらに、④ 幼児期に細菌にあまり接触しないで育つとアレルギー体質になりやすい!? という “衛生仮説” が提唱されています。真偽は今後の研究成果を待たねばなりませんが、現在注目を集めている仮説の一つです。

 アレルギー疾患は慢性の病気です。症状をコントロールして完治に導くまでには、それなりの長い時間と努力が求められます。たとえば気管支喘息に対して、薬物療法(内服薬・吸入薬など)と環境整備(防煙、ダニ・ほこり対策など)が治療の二本柱になり、さらに日頃から呼吸の良し悪しに注意を向ける必要があります。アトピー性皮膚炎に対しては、スキンケア(皮膚の保湿・保護)と薬物療法(主に外用薬)と環境整備(ダニ・ほこり対策など)が不可欠で、これに食物アレルギーを合併していれば除去食療法も加わります。いずれもライフスタイルに深く関わる問題ばかりで、患児および家族と医療側(医師および看護師)との間に良好な信頼関係が築かれなければ、治療は成り立ちません。医師にとって、アレルギー疾患を診断することは、そのあとに長く続く治療を共に進めていく責務を背負うことに繋がると考えています。

 アレルギー疾患に対する、当クリニックの基本姿勢を明記いたします。第一に、患児および家族に病気への理解を深めていただく必要があり、そのための説明を繰り返し行います。また、処方されている薬の名前、用量・用法、目的を機会あるたびにお話しいたします。第二に、精神的なバックアップを重視しています。病気や治療法への不安がありましたら、どうぞ何でもお気軽に御相談ください。第三に、小児科医として、患児の人格や成長を含めた全人的な診療を行います。アレルギーだけを切り出して治療するのではなく、患児の置かれた状況(家族、幼稚園・学校、日常生活、性格など)に配慮して、息の長い共同作業を行う気持ちで病気の治癒を目指します。第四に、日進月歩の発展を遂げているアレルギー治療の最新情報をにらみながら、患児にとって最良の治療法を選択してまいります。