2007年2月1日

子どもの事故は防止できる

 0歳児を除く子どもの死因の第一位は「不慮の事故」です。わが国で毎年1000人近くの子どもが事故で命を落としています。これはインフルエンザ脳症、麻疹、悪性新生物(がん、腫瘍)による死亡に比べて格段に多い数値です。事故は子どもにとって重大な健康問題であることを、保護者の方々に知っていただきたいと思います。
子どもには危険予知能力が備わっていないため、思いがけない行動をしばしばとります。「わが子に限って大丈夫」という楽観視は、根拠のない空想に過ぎません。事故はすべての子どもに「起こりうるもの」であり、親の注意によって「防ぎうるもの」です。日常の危険から子どもを守るための方策を考えてみましょう。

 ① 乳幼児の事故で最も多いものは誤飲です。赤ちゃんには、手にしたものを口に入れる習性があります。頻度順にタバコ、医薬品、化粧品、洗剤、殺虫剤が原因のワースト5で、他にもボタン電池、硬貨、画鋲など、それこそ何でも食べてしまいます。3歳児が口を最大に開けたときの口径は39mmです。直径39mm以下のサイズの物(親指と人差し指で輪を作り、それが何mmか知っておくと便利です)を子どもの手の届かない場所に置くことで、誤飲事故を防止できます。
 ② 転倒・転落も乳幼児に多い事故です。ベッドからの転落を防止するには、ほんの数秒ほど離れる時でもベッド柵を上げることを怠ってはいけません。クーハンや歩行器は事故の報告が多いため、使用をお勧めしません。ベビーカーに乗せるときは、赤ちゃんをベルトで保持しましょう。階段からの転落防止に柵を取り付けましょう。ベランダや窓からの転落防止には、踏み台になる物を置かない、窓際にベッドやソファを配置しない、などの工夫が必要です。
 ③ 浴槽での溺死・溺水は悲惨な事故です。一人でヨチヨチ歩きを始める時期が最も危険です。洗い場から浴槽の縁までの高さが50cm以下だと、子どもが身を乗り出して浴槽に落ちる危険が増します。2~3歳までは残し湯をしない、風呂場に鍵をつけて子どもを入れない、子どもだけで入浴させない、などが浴槽での事故を防止する要点です。
 ④ 自動車事故による死亡も後を絶ちません。傷害を軽減するには、チャイルドシートで身体を拘束することが不可欠です。ある調査では、シートの装着法が誤っているケースが過半数を占めました。シートの背もたれを前方向に強く引っ張り、座席とのすき間が10cm以上あくようだと、正しく装着されていません。わが家のシートを再点検してください。
 ⑤ 自転車事故にもご注意ください。ヘルメットの着用、足部ガード付きの補助椅子の使用、子どもを乗せる時は最後でおろす時は最初に、を心がければケガを防止できます。
 ⑥ 火傷(やけど)の防止には、熱源(アイロン、ポット、炊飯器、ストーブなど)を子どもから隔離する、テーブルクロスを使用しない、などが要点です。

 事故に対する有効で簡単な防止策は存在し、それを実行すれば子どもの安全を確保できます。予防は治療に勝ります。事故予防をより詳しく知っていただくために、「街のジャングルブック(MCメディカ出版)」を貸本として用意しました。どうぞ御覧ください。