2007年3月1日

ダニ対策をすべての家庭で

 アレルギー疾患にかかる子どもが増えています。原因の一つは室内で発生するハウスダストです。ハウスダストとは、家の中のダニ、カビ、毛、フケ、繊維など、ホコリの総称。中でもアレルギーに深く関わるものはダニです。ハウスダストに対して過敏性を有する人々のほぼ100%が、ヒョウヒダニの死骸やフンに反応します。ダニ退治こそが、ハウスダストによるアレルギー疾患(喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎)を解決するための基本です。

 ダニは室内で年中生息しています。気温20~30℃、湿度60%以上がダニにとって繁殖しやすい環境です。1つがいのダニを高温多湿の環境に放つと、3ヶ月後には30万匹にまで増殖し、空気中に大量の死骸やフンを漂わせます。近年、エアコンの普及や建物の気密性の向上により、人にとってもダニにとっても快適な室内環境がもたらされました。増え過ぎてしまったダニを一掃するための対策を考えてみましょう。

 布団、カーペット、ソファ、カーテン、ぬいぐるみなどがダニの繁殖場所であり、これらを清掃することがダニの除去に有効です。しかし、忙しい日常生活の中であらゆる場所を完璧に片付けることは難しいと思います。そこで子どもが長い時間を過ごす場所から順々に、(1) 寝具(布団・ベッド)、(2) 寝室、(3) 居間 を優先的に清掃することを提案します。
 ① 寝具対策は、布団カバーを週1回以上丸洗いする、布団を週1回以上天日干しし(花粉の季節や梅雨時は布団乾燥機の代用も可)、取り込む前に布団をたたいてホコリを表面に浮かび上がらせ、取り込んだ後に掃除機で片面あたり40~60秒間吸引する(専用ノズルあり)。以上を半年間続けるとダニの量が激減し、同時に喘息発作も著しく減少することが実証されています。さらに、経済的余裕があれば高密度繊維性の防ダニ布団カバーを使用する、枕の中身をプラスチック製にする、などが有効な手立てです。
 ② 床はフローリングが理想的です。掃除の際に大切なことは、先に拭き掃除をしてから次に掃除機をかけることです。先に掃除機をかけるとダニが空気中に浮遊して、後から拭き掃除をしてもダニを効率よく取り除けません。カーペットや畳については、ダニが表面から中ほどにかけて活動しているため、吸引力の強い掃除機を用いて(あるいは隙き間ノズルをつけて)、いろいろな方向からゆっくり(1畳あたり40~60秒間)動かすと、ダニを効率よく吸い取れます。床掃除は週2~3回以上必要です。
 ③ 湿気対策は、部屋の換気です。晴れた日にはこまめに窓を開け、部屋の中に風を送り込みましょう。窓が開けられない季節には、エアコンのドライ運転や除湿器が有用です。
 ④ ぬいぐるみはできるだけ数を少なくし、3ヶ月に1回は洗濯します。ダニの餌をなくすことも大切です。ダニの好物は、人の毛やフケ、ペットの毛、菓子の食べこぼし、カビなどです。部屋やソファの隅々にまで掃除機をかけて、ダニの餌の供給を絶ちましょう。

 以上の対策は、アレルギー疾患を持つ人のいる家庭に限りません。現代の子どもたちにとって、将来的にダニに感作される可能性は十分にあります。生後早い時期からダニへの曝露を減らす努力は大切です。また、ダニ対策を施すと、ダニ・アレルギーを持たない喘息児の発作も減ることが知られています。おそらく、ダニ以外のカビ、雑菌など人体に悪影響を及ぼす因子が同時に取り除かれるからでしょう。ダニ退治は、アレルギー疾患の有無にかかわらず、すべての家庭において重要なことです。ぜひ今日から取り組んでみてください。