皆さんはイオン飲料にどのようなイメージをお持ちでしょうか。イオン飲料の宣伝文句には「血液と同じ成分」「身体にやさしく水分補給」などと書かれています。水を飲むよりもイオン飲料を飲む方が身体に良い、なんとなく健康的、と考える人も多いと思います。本当にその通りでしょうか!?
イオン飲料は塩分と糖分を水に溶かしたものです。下痢や嘔吐で失われた体液を補うのに適しています。とくに、乳幼児用に調整された飲料(アクアライトなど)は、腸管から吸収されやすい工夫がなされています。胃腸炎がまだ軽い段階で用いると輸液(点滴)とほぼ同等の効果が得られるため、私も大いに推奨しています。しかし、下痢や嘔吐が治まり脱水の危機が去れば、イオン飲料の出番はそこで終わりです。健康なときにイオン飲料を水の代わりに与えてはいけません。
イオン飲料を常用することによる弊害は三つあります。第一は塩分過多で、第二は糖分過多です。普通の食事をとっている乳幼児に、塩分や糖分をさらに補給する必然性はありません。余計な塩分は腎臓に負担をかけ、余計な糖分は肥満を助長します。さらに、塩分も糖分も味覚形成に大きな影響を及ぼします。乳幼児のときから「しょっぱい」「甘い」ものに慣れ親しんでいると、無味の水では物足りなくなりイオン飲料を絶えず求めるようになります。子どもの欲しがるままに与えていると、将来の生活習慣病(高血圧や肥満)にまっしぐらです。
第三の弊害は虫歯です。イオン飲料のpHは3.6~4.6と低値です。pH5.4以下では歯のエナメル質の脱灰が起こり虫歯になりやすいため、イオン飲料が口の中に残ると虫歯の原因になります。イオン飲料を与える必要がある場合は(下痢や嘔吐のとき)、寝る前や寝ながら与えないこと、やむをえず与えた時は綿棒や指先に巻いたガーゼで口の中を拭くことを心がけましょう。
結論として、イオン飲料をとるのは塩分や水分が失われたときだけ(乳幼児では下痢・嘔吐で食事をとれないとき、学童では激しい運動で汗をかいた後)にとどめ、普段は水やお茶をとる習慣をつけることが大切と言えましょう。