内科系(小児科、内科など)の治療の主役は「薬」です。病巣を切ることを最終的な解決手段とする外科系とは、この点が根本的に異なります。筆者は、研修医のときに先輩から「小児科医が処方する薬は外科医がふるうメスと同等の重みがある」と厳しく教わりました。今もその戒めを心して薬を決めています。筆者が子どもに薬を処方する際の方針は、「真に必要な薬をシンプルに」。あれもこれもと欲張りすぎると、量が増えて味が複雑化して飲みにくい上に、稀といえども薬物相互作用や副作用の心配が増します。今回のコラムでは、薬に関する疑問についてお答えしましょう。
1. いつ飲むか?
薬の袋に「1日3回、食後」と記されていても、食後に限定する必要はありません。食前や食間でも大丈夫です。むしろ食後にこだわって服薬が抜けたり不規則になる方が問題です。起きている時間を三等分して、たとえば「朝8時、昼2時、夜8時」とか、幼稚園や学校で昼に飲めない場合は「朝、帰宅時、就寝前」にしてもいいでしょう。特別な飲み方が必要な薬は、その都度ご指導いたします。
2. 何に混ぜてもいいか?
薬は水と共に飲むのが原則ですが、どうしても飲めない場合は、牛乳・アイスクリーム・チョコクリーム・ゼリー・メープルシロップ・ジャムなどに入れても構いません。溶かした薬をシャーベット状に冷やすのも良い方法です。注意点として、乳児にはハチミツを混ぜて与えないでください。乳児の主食であるミルクに混ぜると、飲み残したりミルク嫌いになる恐れがあります。混ぜてはいけない物がある薬は、その都度ご指導いたします。
3. 吐いたらどうするか?
飲んだ直後に明らかに薬を吐いた場合は、同じ量をもう一度飲んでも構いません。5~10分以上たってから吐いた場合は、追加して飲まない方が無難でしょう。
4. いつまで続けるか?
最後まで飲むべき薬か、症状が軽快したらやめてよい薬か、処方時にご説明いたします。途中でやめてよい薬(解熱薬、鎮吐薬、整腸薬、感冒薬など)は、同じ症状が現れたときに再使用できます(抗生物質は不可です)。ただし「薬がまだ手元にあるから」といって受診が遅れぬようにご注意ください。病状が良くならないときは早めの再受診をお願いいたします。残薬の保存期間の大体の目安は、散剤3~6ヶ月間(乾燥剤と共に缶に入れて室温で)、シロップ剤2~3週間(冷蔵庫で)、坐剤1年間(冷蔵庫で)です。もしも散剤が湿気を吸ったりシロップ剤が混濁したら使わずに廃棄してください。
5. お薬手帳の用途は?
お薬手帳は必ずご持参ください。① 他院(他科)で処方された薬との重複や相互作用を避けるために必要です。② アレルギー歴や副作用歴を知ることができます。③ これまでの投薬の内容が病気の診断に役立つ場合があります。