新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生から約3年が経過しました。ウイルスの猛威が続く一方で、感染対策の緩和が徐々に進められています。2023年の動向を予想してみます。
厚生労働省は昨年12月21日、COVID-19の重症化率と致死率の最新データを公表しました。60〜70代の年齢層において、オミクロン株が流行した第7波(2022年7〜8月)の致死率は0.18%で、デルタ株が流行した第5波(2021年7〜10月)の1.34%、オミクロン株に置き換わった直後の第6波(2022年1〜2月)の0.70%に比べて大きく低下しました。インフルエンザの致死率0.19%とほぼ同等です。重症化リスクが最も高い80代以上の年齢層においても、COVID-19の致死率は1.69%に低下しました(第5波で7.92%、第6波で4.57%)。こちらもインフルエンザの致死率1.73%とほぼ同等です。ただし、COVID-19とインフルエンザのデータは異なる対象者を見ているため、単純に比較して「両者が同等」と結論づけることはできません。
いずれにせよ、COVID-19の脅威はかなり軽減したように感じられます。致死率が低下した原因として、ウイルスの変異に伴う弱毒化とワクチン接種率の上昇があげられます。また、過去に感染した人が増えたことにより、免疫を保有する人が増えたことも一因にあげられます。
では、COVID-19は「もはや風邪の一種に過ぎない」と言えるでしょうか。以下、感染症専門医・忽那賢志氏の論説(https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221228-00329722)を引用します。
オミクロン株になり重症度が下がり、一人ひとりにとっては以前ほど恐れるべき感染症でなくなってきたことは事実です。かつて致死率5%であった時期と、致死率0.2%である今と、同じような対策が必要と考えることはできません。感染対策が緩和に向かうこと自体は当然の流れかと思います。一方で、
・1年間に3万人以上が亡くなっている(インフルエンザは年間数百〜数千人)
・1年間に何度も流行を起こす(インフルエンザは冬に流行する)
・一定の割合で後遺症がみられる(インフルエンザでは稀)
といった点からは、現時点では風邪やインフルエンザと同等に考えることは難しいでしょう。また医療に与える負荷も風邪やインフルエンザとは比較になりません。感染者の重症度がインフルエンザと同程度であるからと言って、決して「コロナは風邪」「コロナはインフルエンザみたいなもの」とは言えません。
「COVID-19が風邪やインフルエンザと同等」と結論づけるのはまだ早いようです。たとえ致死率が低下しても、感染者数が高水準を保っていれば(オミクロン株の感染力は強大です)、死亡者数も高水準で推移します。一人ひとりにとっては風邪に近づいているものの、社会全体としては感染拡大防止の努力がまだ必要です。感染して重症化しやすい人たちは高齢者と基礎疾患保有者です。小児の間でも稀ですが、死亡例が報告されています。日本小児科学会の調査によりますと、国内における10歳未満、10代のCOVID-19による死亡者数は、オミクロン株流行前はそれぞれ0例、3例でしたが、オミクロン株流行後の7ヶ月間で、それぞれ8例、6例が報告されています。また、2022年3〜8月に重症・中等症になった220名の小児のうち、68%は基礎疾患を有しませんでした。
コロナ以前の生活を取り戻すまでに、あとしばらくの時間と辛抱が必要なようです。基本的な感染対策(手洗い、屋内でのマスク着用など)を続けるとともに、ワクチン接種率をさらに上げることが、新型コロナウイルスへの有効な対抗手段と思われます。