2023年1月3日

過剰なブルーライトは睡眠を妨げる

 夜眠れない、朝起きられない、学校に遅刻する(または行けない)などを訴えて来院する子どもたちが増えています。さまざまな理由が考えられますが、過剰なブルーライトへの曝露が原因の一つかもしれません。ブルーライトがもたらす睡眠への影響について解説いたします。

 ブルーライトは波長380500nmの青色光で、可視光の中で波長が最も短く、強いエネルギーを持ちます。太陽光に含まれるブルーライトは、体内時計をセットする、気分を高揚させる、注意力を高めるなど、さまざまな恩恵を与えてくれます。ブルーライトはまた、パソコン、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などの電子機器からも発せられます。電子機器が普及した現代社会において、昼夜を分かたずブルーライトを浴び続けていることが問題になります。

 人間は、地球の自転による24時間周期の昼夜変化に同調し、体内環境を変化させる機能を備えています。体内時計、概日リズム(サーカディアンリズム)とよびます。体内時計をつかさどる中枢は、脳の奥に位置する視床下部に存在します。明るく強い光信号であるブルーライトが目から入ると、これを感知する視細胞(メラノプシン含有網膜神経節細胞)が視床下部にその刺激を伝え、生体を活動状態に導きます。体内時計は、朝起きて太陽光を浴びることで身体を目覚めさせ、約14時間後から徐々に眠気を感じるように設定されています。

 夜間にパソコンやスマートフォンの画面を長時間見ていると、視床下部がまだ日中であると勘違いし、体内時計が攪乱されます。その結果、寝入るまでに要する時間が長くなり、良質の睡眠が妨げられ、翌朝の目覚めが悪くなります。この状態が長く続くと、起床困難、日中の活動能力の低下、登校困難、起立性調節障害の症状(昼夜逆転と睡眠相後退がもたらす二次的な状態)、慢性の頭痛、スマートフォン依存症、うつ状態などの健康障害が生じます。

日本人の睡眠時間は世界中で最も短いといわれています。良質で十分な睡眠時間を確保するために、夜遅くまで光を浴びる生活を見直すことが必要です。起立性調節障害の症状や慢性の頭痛に対して、夜間のブルーライト制限が最良・最短の治療になるケースが多々あります。寝る直前までスマートフォンを手放せない方に、ぜひ実行していただきたい約束事を示します。

・パソコン、スマートフォン、タブレット、ゲーム機の使用を13時間以内に制限する

・夜8時以降(あるいは就寝2時間前から)これらの電子機器を使用しない

・電子機器に代わる楽しみを見いだす(音楽、読書、アロマ、絵画、家族の会話 など)


さらに、起きる時間を毎朝一定にする、朝起きたら太陽光を浴びる(できれば窓を開けて外の空気を吸い込む)、朝食をしっかり食べるなども、体内時計を乱さないために欠かせない生活習慣です。子どもたちが健やかに成長するために「適切な睡眠」と「早寝早起き朝ごはん」が大切であることを再認識していただければ幸いです。