2023年5月4日

新型コロナ感染症:子どもの後遺症は3.9%

 国内で新型コロナウイルスに感染した子どものうち、発症から1ヶ月以上たっても症状が残る割合が3.9%だったことをが、日本小児科学会の研究班から51日に発表されました。対象となった人は、20202月から2023411日までにデータが集められた20歳未満の4606人です。このうちの181人に後遺症が認められました。主な症状は、発熱(30%)、咳(30%)、嗅覚障害(18%)、倦怠感(17%)、味覚障害(15%)、腹痛(9%)、頭痛(8%)、下痢(8%)、嘔気(6%)でした。数は少ないものの、筋肉痛、胸痛、意識障害、うつ状態の報告もありました。

 子どもの後遺症は大人に比べて少ないとされていますが、今回の調査により、一定の割合で生じている実態が明らかになりました。年齢の低い子どもの場合、症状を自覚しなかったり適切に訴えられなかったりすることで、後遺症を見逃されている可能性があります。たとえば、頭痛や倦怠感を言葉で表現できる幼児はほとんどいないでしょう。また、これらの症状は血液検査や画像検査で捉えることができません。したがって、後遺症の割合3.9%という数値は、実際よりも少なめに見積もられているかもしれません。

 新型コロナウイルス感染症で後遺症をきたす原因はまだ解っていません。不活化されたウイルス蛋白質が慢性的な炎症を引き起こすという説、少量の生きたウイルスが持続的に感染しているという説、新型コロナウイルス感染症に伴うストレスで身体が傷ついているという説、などがあります。また、別の病気であるのに新型コロナウイルス感染症の後遺症と誤認されているケースもあるかもしれません。後遺症の原因解明に向けて、今後の研究が待たれます。

子どもの新型コロナウイルス感染症の多くは大人に比べて症状が軽くすみますが、稀に重症化するケースが報告されており、上述のとおり後遺症に悩まされるケースも少なからずあります。これらを予防する有力な手段の一つはワクチン接種です。ワクチン接種の効果は十全とはいえませんが、発症予防と重症化阻止に一定の役割を果たすことが証明されています(特に重症化阻止にすぐれています)。新型コロナウイルス感染症の重症化や後遺症を防ぐ最善の方法は、新型コロナウイルスに感染しないようにすることです。種々の感染防止対策とともに、ワクチン接種も有力な選択肢に入れたいと思います。当院は接種をお勧めしています。

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが58日に変わります。上から2番目に危険度の高い「2類相当」から、季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行します。感染対策が大幅に緩和され、社会は平時に向かって動き始めます。学校における種々の規制も解除されます。そのこと自体は大いに歓迎すべきことです。しかし5類に変わるからといって、ウイルスの性質が変わるわけではありません。後遺症が意外に多いという今回の調査結果を踏まえ、新型コロナウイルスに対する備えを疎かにしないことが肝要です。