2025年11月19日

インフルエンザの早期流行とワクチンの重要性

 インフルエンザが異例の早さで流行入りしました。2025年第45週(1139日)の時点で、神奈川県における1医療機関あたり1週間のインフルエンザ患者数は36.57人です。流行入りの目安が週間に1人、注意報レベルが週間に10人、警報レベルが週間に30人ですから、すでに警報レベルを超えています。神奈川県で11月に「流行警報」が発令されるのは、新型インフルエンザ(A/H1N1)が初めて現れた2009年以来16年ぶりです。当院でも10月初旬から感染者が徐々に増え始め、11月に入って急増し、直近の第46週(111016日)の1週間で100人を超えました。現在、大和市の複数の小中学校と高校で学級閉鎖が相次いでいます。当初は学童・生徒(小中高校生)が流行の中心でしたが、第45週あたりから幼児(保育園・幼稚園児)にも感染者が増えていて、今後さらなる流行の拡大が懸念される状況です。

2025年8月16日

神経発達症(発達障害)の診療を考える

 神経発達症(以前は発達障害と呼称されていました)は、脳神経の一部の先天的な機能障害にもとづく疾患です。疾患よりも「特性・特質」と捉える方が適切と思われます。神経発達症はいくつかのタイプに分類さます。(1) 限局性学習症、(2) 注意欠如・多動症、(3) 自閉スペクトラム症 の三つが代表例です。自閉スペクトラム症は聞き慣れない言葉ですが、自閉的な傾向の程度(薄い人から濃い人まで)に大きな幅があることから、連続体(スペクトラム)の表現が用いられます。(4) 知的発達症(知的障害)も広い意味で神経発達症に含まれます。(2) (3) (4) の特徴・症状は重なり合い、一人で複数を合わせ持つこともあります。

2025年7月16日

五苓散(ごれいさん)は小児医療に欠かせない漢方薬です

 漢方薬は、複数の生薬(植物の根・茎・果実、鉱物、動物などを加工したもの)を配合して作られる薬剤で、身体にもともと備わっている自然治癒力(病気を治す力)を後押しする働きがあります。当院の日常診療は西洋医学を基本としていますが、漢方薬の方が優れた効果を期待できる場合や、西洋薬で十分な効果を得られない場合(あるいは西洋医学に治療法が無い場合)に、漢方薬を積極的に使用しています。漢方療法の中で最も重宝する薬剤の一つが五苓散(ごれいさん)です。今回のコラムで五苓散について解説いたします。

2025年7月4日

胃腸に症状が現れる食物アレルギー FPIES(エフパイス)

 食物アレルギーといえば、食物を摂取してから1時間以内に生じる皮膚症状(発赤、蕁麻疹)や呼吸器症状(咳、喘鳴)がよく知られています。即時型反応とよばれます。他方、非即時型反応の一つとして、食物を摂取してから14時間後に消化器症状(嘔吐、下痢)が現れる「食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES、エフパイス)」が最近、注目を集めています。以前は稀な疾患とされていましたが、報告数が増えたことにより、2012年から食物アレルギー診断ガイドラインで扱われるようになりました。食物アレルギーとは気づかれにくいFPIESについて解説いたします。

2025年6月15日

「木の実」アレルギーが増えている

 木の実類(ナッツ類)のアレルギーを持つ子どもが近年、増えています。木の実類が菓子や惣菜に含まれていて、知らずに摂取したら重い症状を呈し、初めてアレルギーに気づいた、というケースを診る機会が時々あります。木の実類には、クルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、ペカン(ピーカン)ナッツ、カカオなどがあげられます。ピーナッツは木の実類ではなく土の中に実る豆類ですが、同様に扱われることが多いです。

2025年5月24日

チック、チック症への対応法

 親御さんから、「うちの子はまばたきをよくします。目が痒いのでしょうか?」「咳払いが止まりません。喘息か何か、肺の病気があるのでしょうか?」などの心配事を相談される機会がしばしばあります。おそらくチックという症状です。チック、チック症について解説いたします。

2025年4月9日

麻疹の脅威を再認識する

 麻疹の感染者が3月以来、急増しています。202542日時点で、全国で58人(神奈川県で7人)が報告され、昨年1年間の45人を早くも超えました。年齢別では2030代に多く、01歳児も7人います。麻疹ワクチンをまだ接種していない01歳児には免疫がなく、感染すると重症化しやすいため、経過が気がかりです。58人の過半は海外で感染したとみられていますが(ベトナムが最多)、渡航歴がなく接触歴がはっきりしないケースもあり、今後の流行拡大が懸念されます。