漢方薬は、複数の生薬(植物の根・茎・果実、鉱物、動物などを加工したもの)を配合して作られる薬剤で、身体にもともと備わっている自然治癒力(病気を治す力)を後押しする働きがあります。当院の日常診療は西洋医学を基本としていますが、漢方薬の方が優れた効果を期待できる場合や、西洋薬で十分な効果を得られない場合(あるいは西洋医学に治療法が無い場合)に、漢方薬を積極的に使用しています。漢方療法の中で最も重宝する薬剤の一つが五苓散(ごれいさん)です。今回のコラムで五苓散について解説いたします。
2025年7月16日
2025年7月4日
胃腸に症状が現れる食物アレルギー FPIES(エフパイス)
食物アレルギーといえば、食物を摂取してから1時間以内に生じる皮膚症状(発赤、蕁麻疹)や呼吸器症状(咳、喘鳴)がよく知られています。即時型反応とよばれます。他方、非即時型反応の一つとして、食物を摂取してから1〜4時間後に消化器症状(嘔吐、下痢)が現れる「食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES、エフパイス)」が最近、注目を集めています。以前は稀な疾患とされていましたが、報告数が増えたことにより、2012年から食物アレルギー診断ガイドラインで扱われるようになりました。食物アレルギーとは気づかれにくいFPIESについて解説いたします。
2025年6月15日
「木の実」アレルギーが増えている
木の実類(ナッツ類)のアレルギーを持つ子どもが近年、増えています。木の実類が菓子や惣菜に含まれていて、知らずに摂取したら重い症状を呈し、初めてアレルギーに気づいた、というケースを診る機会が時々あります。木の実類には、クルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、ペカン(ピーカン)ナッツ、カカオなどがあげられます。ピーナッツは木の実類ではなく土の中に実る豆類ですが、同様に扱われることが多いです。
2025年5月24日
チック、チック症への対応法
親御さんから、「うちの子はまばたきをよくします。目が痒いのでしょうか?」「咳払いが止まりません。喘息か何か、肺の病気があるのでしょうか?」などの心配事を相談される機会がしばしばあります。おそらくチックという症状です。チック、チック症について解説いたします。
2025年4月9日
麻疹の脅威を再認識する
麻疹の感染者が3月以来、急増しています。2025年4月2日時点で、全国で58人(神奈川県で7人)が報告され、昨年1年間の45人を早くも超えました。年齢別では20〜30代に多く、0〜1歳児も7人います。麻疹ワクチンをまだ接種していない0〜1歳児には免疫がなく、感染すると重症化しやすいため、経過が気がかりです。58人の過半は海外で感染したとみられていますが(ベトナムが最多)、渡航歴がなく接触歴がはっきりしないケースもあり、今後の流行拡大が懸念されます。
2025年4月2日
百日咳が増加中 〜 ワクチンの追加接種を 〜
国立感染症研究所は、2025年3月23日までの1週間で、全国の医療機関から458人の百日咳が報告されたとの速報値を発表しました。今年に入ってからの累積数は4100人で、昨年1年間の4054人をすでに超えています。神奈川県では、2025年3月17日の時点で136人の報告があり、昨年1年間の48人をすでに超えています。主に学齢期(5〜14歳)の子どもに発生しています。
2025年3月20日
鼻腔に噴霧するインフルエンザワクチン「フルミスト」 (7月21日 一部加筆)
鼻腔に噴霧するだけで済む(= 注射いらずの)インフルエンザワクチン「フルミスト」が2023年に日本で認可されました。当院は2024年から使用を開始しています。フルミストは2003年に米国で認可され、2011年に欧州でも認可されました。一時的な曲折(2009年に流行した新型インフルエンザに対して効果が劣ること)を経ましたが、その後に改良が進み、日本でもこのたび有効性と安全性が認められたわけです。今回は噴霧型ワクチンについて解説いたします。