2021年1月1日

新型コロナウイルスワクチンへの期待

 新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない中、希望の持てる話題を提供したいと思います。新型コロナウイルスワクチン(以下、ワクチンと略)の最新情報です。

 日本で薬事承認申請中の米国ファイザー社製ワクチンの第三相臨床試験の成績が学術誌に掲載されました(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2034577)。18歳以上の約43千人の被験者を偽薬(プラセボ)投与群とワクチン投与群の2つに分け、約100日間の経過を追ったところ、新型コロナウイルス感染症に罹患した人は、偽薬投与群(ワクチンを接種しなかった群)で162人、ワクチン投与群で8人という結果でした。しかも、偽薬投与群では日数の経過とともに罹患者が直線的に増えたのに対し、ワクチン投与群では接種後2週間から先は罹患者がほとんど出ませんでした。ワクチンを接種することにより発症リスクを95%減らすという結論になります。「新型コロナウイルスに接した(であろう)人のうち、これまで10人だった発症者が1人以下になる」と言い換えることもできます。学術的な検証がしっかり為された説得力のあるデータです。また、米国モデルナ社製ワクチンも同様の臨床試験により、有効率94%の成績を出しています。

2020年12月6日

新型コロナウイルス感染症の最新情報/学校保健、ワクチン、インフルエンザ

[1] 学校における新型コロナウイルス感染症

 文部科学省は123日、学校における新型コロナウイルス感染症の調査結果を発表しました(https://www.mext.go.jp/content/20201203-mxt_kouhou01-000004520_01.pdf)。

 学校活動が本格的に再開された61日から1125日までの間に、小学校・中学校・特別支援学校における感染者数は2079人、うち有症状者数は894人(43%)、重症者数はゼロという数値でした。全年齢層に占める小中学生の割合は非常に低く重症者がおらず、小児は成人に比べて感染しにくく感染しても重症化しにくい可能性が裏付けられています。その機序として、気管支上皮細胞で新型コロナウイルスの受容体であるACE2の発現が小児で少ないこと、自然免疫応答による防御システムが小児でより効率的であること等が仮説としてあげられています。加えて、各学校における感染拡大防止のための日々の取り組みが功を奏していると思われます。

2020年11月15日

アレルギー性鼻炎を治す舌下免疫療法

 スギ花粉やダニによるアレルギー性鼻炎に悩む子どもが近年、増加しています。当院にも多くの患者さんが通っておられます。アレルギー性鼻炎の治療の基本は、抗アレルギー薬の内服と点鼻、アレルギーの原因物質(アレルゲンと呼称。スギ花粉、ダニ)を回避するための環境整備であり、アレルギー体質を根本的に治すことは困難とされてきました。

 根本的な治療法は、実はあります。アレルゲンを少量ずつ長期間にわたり投与して身体を慣らしていき、アレルギー反応を起こしにくい体質に変える方法です。減感作療法またはアレルゲン免疫療法と称します。かつてはアレルゲンを皮下注射で投与していましたが、注射の痛さと頻回の通院が嫌われて、普及に至りませんでした。皮下免疫療法に代わって登場したのが、アレルゲン抽出物を錠剤にして舌下に投与する「舌下免疫療法」です。注射が不要であること、自宅で治療を行えること、副作用の頻度・程度が注射よりも少ないことが利点です。舌下免疫療法はわが国で2014年に認可され、以来6年間でその評価が着実に高まりつつあります。しかし一般の認知度はまだ低いのではないでしょうか。

2020年10月9日

新型コロナウイルスの最新情報/再感染、無症状者からの感染、死亡率の低下

  今冬、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行が懸念されています。現時点で今後の動向を正確に予測することはできませんが、インフルエンザワクチンを接種して流行に備えておくことは有用です。新型コロナウイルスについても、知識をアップデートして「正しく恐れる」姿勢を保つことが大切と思います。

2020年9月8日

「心の幸福度」について考える

 ユニセフ(国際児童基金)は9月3日、先進・新興国38ヶ国に住む子どもたちの幸福度を調査した結果を公表しました。日本の成績は以下のとおりです。
 ○ 精神的な幸福度(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率):37位
 ○ 身体的健康(子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合):1位
 ○ スキル(読解力・数学分野の学力、社会的スキル):27位
 ○ 総合順位:20位

 心の幸福度が下から2番目という、非常にショッキングな結果でした。内容を詳しく見ると、15歳の時点で生活満足度の高い子どもの割合は、1位のオランダが90%に対して、日本は下から2番目の62%でした。15〜19歳の10万人あたりの自殺率は、最少のギリシャが1.4人に対して、日本は約5倍の7.5人(下から12番目)でした。「すぐに友達ができる」と答えた15歳児の割合は、1位のルーマニアが83%に対して、日本は下から2番目の69%でした。わが国の子どもたちの心の健康〔メンタルヘルス〕がきわめて低い水準にあることがうかがい知れます。また、各国に共通に見られる現象として(日本も例外ではなく)、家族からのサポートがより少ない子どもたち、いじめに遭っている子どもたちは、精神的な幸福度がより低い結果になっていました。

2020年8月30日

新型コロナウイルス感染症に伴う子どもの心身症

 新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから、ほぼ半年が過ぎました。この間、子どもたちは「普通でない」生活を強いられてきました。全国一斉の休校措置、家庭内での補習学習、短い夏休み、過密なカリキュラム、各種イベントの中止、感染防御のための細々した決まり事など、子どもたちにとってストレスの多い環境が長く続いています。今のところ事態の収束を見通すことができません。

 心理社会的刺激(ストレス)が子どもたちに与える影響は小さくありません。当院において4月以降、心身の不調を訴える子どもが急増しています。おそらく心因反応にもとづくと思われる、頭痛、食欲不振、腹痛、倦怠感、息苦しさ、不眠、めまい、チック症(まばたき、声出し、首振り)、登校困難などの諸症状を呈する子どもたちを数十人ほど診てきました。当院は情緒安定作用を有する漢方薬を積極的に使用して、多彩な症状を緩和することに努めています。漢方薬は西洋薬(向精神薬)と異なり、副作用がほとんどなく依存性を生じないため、子どもにも安心して使用することができます。ただし薬だけで全てを解決することはできません。環境を変える努力が求められます。

2020年8月9日

新型コロナウイルスの最新情報/変異、ワクチン、うがい薬

[1] 新型コロナウイルスの遺伝子変異(新・新型コロナウイルス?)
 国立感染症研究所は、新型コロナウイルスの遺伝子解析の結果から、「感染症は5月にいったん収束に向かったものの、軽症者や無症状者の間で密かに受け継がれ、6月以降に再び顕性化して全国に拡散中」と発表しました(8月7日)。報告書によりますと、3月中旬以降に国内で広がったウイルスは、中国・武漢からヨーロッパを経て入ってきた「ヨーロッパ系統」で、5月にいったん収束しました。6月中旬以降に感染が再拡大して現在に至りますが、今度は「ヨーロッパ系統」の遺伝子の一部が変異した新ウイルスが主役です。おそらく軽症者や無症状者による感染が水面下で続いていて、この間に変異を生じたのだろうと推測されます。なお、病原性が強くなったり弱くなったりする変異は確認されていません
 感染者が急増しているにもかかわらず重症者や死亡者が大きく増えないため、ウイルスが弱毒化しているのではないかと期待する言説がありますが、今のところ確たる証拠はありません。第一波では見逃されていた軽症例が、検査体制の拡充により診断されるようになったことが主な理由と考えられます。軽症者は感染を広げやすいので注意が必要です。体調が良くない時は「自分は新型コロナウイルスに感染しているかもしれない」と考えて、外出を控えて療養に努めることが肝要です。