2010年8月25日

子どもの口と歯の健康

 口や歯に関する質問を日常診療の中でしばしば受けます。小児科医として(歯科医に任せっきりにせず)口と歯の健康に積極的にかかわりたい、との思いでQ&A集を作りました。

Q1 舌の上全体が白くなって、拭いても取れません。治療は必要ですか?
A1 多くの場合、母乳やミルクの成分が固まって舌のシワに入り込んだものです。ときどきガーゼで拭いて清潔を保ちましょう。体調が良くない時、口の中に元々いるカンジダ(カビの一種)が増えて舌を覆うことがあります。カンジダに毒性はほとんどないので、心配はいりません。口の中を清潔にするだけで健康な舌に戻ります。

2010年4月26日

血液型の疑問にお答えします(改訂版)

[1] 血液型とは何でしょうか? 
 人間の体内を流れる血液は、1) 全身に酸素を運ぶ赤血球、2) 病原体などの異物から身を守る白血球、3) 出血を止める血小板、4) 液体成分の血漿、からできています。私たちにとってなじみの深いABO式血液型は、赤血球の表面に突き出た糖鎖の違いによりA、B、O、ABの4型に分類する方式です。赤血球の血液型はABO式の他にも、Rh式、MN式、ルイス式、P式、ダフィー式など数通りの分類法があります。さらに血液型は赤血球だけに限らず、白血球、血小板、血清にもあります。
 輸血の際にとりわけ重要な血液型が、赤血球のABO式とRh式です。型が合わないと、輸血した赤血球が壊されて溶血する危険があります。また、臓器移植に重要な役割を演じるのは白血球の血液型(HLA)です。型が合わないと拒絶反応を起こします。血液型は、他人の血液や臓器を自分が受け入れられるかどうかの判定材料として用いられます。

ジェネリック医薬品

 ジェネリック医薬品という言葉をご存知ですか。ジェネリック医薬品とは、特許の切れた薬を他のメーカーが真似て作ったものです。新薬の開発に伴う費用が要らないため、価格を先発品よりも2~8割安く設定できます。国(厚生労働省)は医療費削減のためにジェネリック医薬品の使用を強く推奨し、テレビ・コマーシャルは「同じ薬が半額以下」「使わなきゃ損」と盛んに宣伝しています。まるで「ジェネリック医薬品を積極的に使わない医療機関は遅れている」と言わんばかりです。しかし本当に良い事ずくめなのでしょうか。

2010年3月14日

麻疹の根絶は間近い

 厚生労働省は3月10日、昨年1年間の麻疹患者数が741人だったと発表しました。麻疹による死亡者は1人もいませんでした。わが国の歴史上、年間の患者数が1000人を下回った記録はなく、死亡者が1人もいなかったことと合わせて、まさしく史上初の快挙でした。ほんの10年ほど前に、年間20~30万人が罹患し、100人以上が死亡していたことを考えると、驚くべき進歩です。当クリニックにおいても、22ヶ月間連続して、麻疹にかかった子どもを診ていません。麻疹の根絶の日がいよいよ近づいて来たことを実感します。 

2010年1月13日

新規のワクチン二種

[1] 肺炎球菌ワクチン [ワクチン名;プレベナー]
 肺炎球菌とヘモフィルス菌(ヒブ)は、細菌性髄膜炎を起こす病原菌です。髄膜とは脳を包み込む膜です。頭蓋骨と脳の間にあり脳を守るクッションの役割を果たしています。髄膜炎とは、この髄膜に病原体が侵入して起こる病気です。脳と隣り合った場所にあるために、脳にもしばしば深刻な打撃を与えます。わが国では年間に約1000人の小児が細菌性髄膜炎にかかり、5~10%が死亡し、20~30%がけいれんや難聴などの重い後遺症を残します。

2009年8月7日

お腹がかぜを引いた時の食事

 急性胃腸炎(お腹のかぜ)にかかって吐いたり下痢した時、どのような食事を与えますか。祖父母の言うこと、育児書に載っていること、医者の言うこと、それぞれ異なるために悩んだ経験をお持ちの親御さんは少なくないと思います。子どもの栄養状態は時代とともに向上しており、食事療法の内容も日進月歩で変わっています。今回のコラムでは、食事療法の変わらぬ基本と変わりつつある応用を解説しましょう。

2009年1月8日

小児救急 <夜間休日のかかりかた>

 クリニックが休みの時に、子どもが急に熱を出したり吐いたりしたら・・・「すぐに救急外来に連れて行くべきか」それとも「明日まで待っても大丈夫か」の判断に迷った経験をお持ちの方は少なくないでしょう。今回のコラムでは、小児救急の仕組みと救急への受診の目安をお伝えいたします。