皆様は病児保育をご存知でしょうか。子どもが病気に罹って保育園・幼稚園や学校に行けなくなり、親御さんが仕事の都合や自身の体調不良で付き添えない時、親御さんに代わって看護師や保育士が子どもの世話と看病をする仕組みです。「子どもが病気の時は親が看るべきだ」という意見はもちろん正解ですが、どうしても休めない性質の仕事に就いている親御さんにとって、子どもの看病を専門家に委ねるという選択肢があってもよいと思います。家庭と仕事の両立を目指す女性にとって、子育ての負担を軽減し社会での活躍を後押ししてくれる病児保育は、とても頼りになる存在と言えましょう。
大和市にはかつて北・中・南の3箇所に病児保育施設がありました。しかし本年9月、北部(中央林間)の十六山病児保育室Bambiniが閉室し、病児保育は2箇所に減ってしまいました。十六山病児保育室Bambiniでは開設者が経費の半分以上を負担し続けてきましたが、補助金の追加を市に要請するも受け入れられず、閉室のやむなきに至ったと聞きます。病児保育は基本的に赤字経営です。営利を目的とするものではありません。児童3名あたりに保育士1人以上を配置するなど細かい規定がある上に、感染症の種類によっては複数の部屋と人員を用意しなければなりません。行政の支援があってこそ成り立つ、公共性の高い福祉事業といえましょう。
市の北部に病児保育施設がなくなったことに困惑する親御さんの声が当院にも数多く寄せられています。本年9月に始められた病児保育の再興を求めるオンライン署名は11月末時点で4,494筆に達しました。「市長への手紙」を含めた市への直接の問い合わせは50件を超えました。
親御さんたちの切実な要望に対して、市は慎重な姿勢を崩していません。「国の指導に基づいて対応している」「地域的な偏りはあるが、市全体としての需要は満たしている」など、ごく控えめな回答にとどまっています。しかし、市内の未就学児約1万人のうちの約半分は北部地域に居住しており、現に困っている親御さんが大勢いらっしゃいます。「病児保育を利用するなら、中部や南部あるいは市外に行ってください」と突き放すのは辛い話です。子育て世代に優しい市であってほしいと切に思います。
筆者(玉井)は地元の小児科医として、子育てに頑張り仕事にも頑張る親御さんの味方でありたいと願っています。大和市北部に病児保育を再興するための活動を続けてまいりますので、皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。