2021年9月1日

新型コロナウイルス 小児への感染拡大 (9月2日 一部加筆)

 新型コロナウイルス感染症の第5波で、10歳未満の小児にも感染が拡大しています。大和市内における10歳未満児の感染者数は、本年16月の6ヶ月間に50人であったのが、78月の2ヶ月間で151人に達しています。感染力の強いデルタ株(インド由来の変異株)の蔓延がその理由です。

 小児は新型コロナウイルスに罹っても重症化しにくいと言われています。確かにその通りですが、感染者数が増えると重症者数も一定の割合で増えます。なかでも基礎疾患(肥満、慢性腎疾患、慢性肺疾患、先天性心疾患、先天代謝異常、糖尿病、免疫抑制状態など)を有する小児は重症化のリスクが高いとされており、注意が必要です。東京都内で7月、10歳未満の女児2人が重症になったと報告されました。大和市内で本年8月までに報告された10歳未満児201人の重症度は、無症状64人、軽症137人、中等症・重症0人です。

 国立感染症研究所が公表した小児の感染経路のデータによると、小学校では、教職員を発端とするクラスターが複数発生している一方、児童の間での感染が大規模なクラスターに進展したケースは確認されていません。デルタ株により小児が感染しやすくなったとはいえ、「小児  小児」「小児  成人」よりも「成人  小児」の方が起こりやすいことに変わりはありません。大和市内における10歳未満児201人を感染経路で分けると、接触歴をたどれる者173名、不明の者28名です。感染した場所は、家庭が67割、保育園・幼稚園・学校が34割と推測されます。

 新型コロナウイルス感染症の小児での拡大は、まず成人の感染が増え、それに伴い家族内感染が増え、結果として小児の感染が増えることで起こります。したがって、成人が新型コロナウイルスに罹らないために、感染防御(マスク、手洗い、三密の回避)に努めること、ならびにワクチンを接種することが、周囲の小児を守ることにつながります。とくにワクチンは、感染拡大を食い止める強力な切り札です。変異株に対する感染・発症阻止効果は完全ではありませんが(それでも90%を超えます)、重症化阻止効果は大いに期待できます。第3波までは重症者の大半を60代以上の高齢者が占めていましたが、ワクチン接種が進むにつれて高齢者の占める割合が減り、未接種の4050代が約半数を占めるに至っています。第5波においてもその傾向は変わりません。

 小児での感染拡大を受けて、二学期の学校活動はどのように行うべきでしょうか。基本は従来と同様に、マスク、手洗い、三密回避による感染防御です。なかでも効果的な感染対策として、不織布マスクの着用(教師、学童ともに)、アルコール消毒液の携行、教室の十分な換気、体調の連日チェックと体調不良時の自宅待機、そして教職員のワクチン接種があげられます。また、人の密集が過度になるイベント(文化祭、体育祭など)は延期を検討せざるを得ません。学級閉鎖の判断基準は、同学級で複数の児童生徒が感染した場合(または感染者が1人でも風邪症状や濃厚接触者が複数いる場合)とされています。複数の学級閉鎖があれば学年閉鎖、複数の学年閉鎖があれば学校閉鎖が考慮されます。

 「子どもを学校に行かせて大丈夫でしょうか」と尋ねられることがあります。これは難しい問題です。学校を休めば感染リスクは低減します。一方で、対面学習の機会が失われ、友だちとの直接の交流ができなくなります。家に閉じこもることによる心の健康被害(抑うつ、情緒障害、心身症など)も心配です。当院にも昨年の全国一斉休校措置があって以来、頭痛、腹痛、食欲不振、起床困難などを訴える小児が数多く訪れています。筆者の私見を述べると、小児は学校に通うことが基本であり、成人はそのための支援に全力を尽くすべきです。先述のとおり、まず成人が感染防御を励行し、社会全体で小児を守ることが大切と考えます。

 [追記]2021年1〜8月の "10代" の感染者数についても記しておきます。総数は361人。無症状54人、軽症306人、中等症1人、重症0人です。年齢が上がるほど、感染経路として家庭よりも学校が増えること、感染経路を追えないケースが多くなる(約半数が不明)ことが特徴です。現在、わが国における感染者の20%超を20歳未満児が占めています。