2021年8月1日

食物アレルギーを意識した、離乳食の進め方

 食物アレルギーの有病率は年々増加傾向にあり、乳児で510%、幼児で5%、学童期で1.53%とされています。育児中の親御さんにはご心配事も多いと思われます。今回のコラムは、離乳食に関して日常診療でしばしば承るご質問にお答えする形で記します。

 [1] 食物アレルギーの発症予防に、妊娠中・授乳中の母体の食物除去は有効ですか?

 妊娠中や授乳中に母親が食物を除去しても、子どもの食物アレルギーを予防することはできません。いつもどおりの食事をお楽しみください。ただし、子どもがすでにアトピー性皮膚炎を発症している場合のみ、授乳中の食物除去により皮膚症状が軽減することがあります。

 [2] 食物アレルギーの発症予防に、離乳食の開始を遅らせることは有効ですか?

 離乳食の開始を遅らせても、食物アレルギーを予防しません。逆に、遅らせることで食物アレルギーが発症しやすくなる可能性が指摘されています。生後56ヶ月で米や野菜から始めて、白身魚、ささ身、豆腐などを順次進めましょう。特定の食物(鶏卵など)を大幅に遅らせることなく、様々な食物を満遍なく与えることが大切です。どの食物に関しても、初回摂取は「体調の良い日に、医療機関を受診しやすい午前中に、1種類ずつ少量を」が原則です。「少量」とはアレルギーのリスクが高い食物は耳かき1杯、高くない食物は小匙1杯と考えておきましょう。

 [3] 鶏卵を始める場合、どのように食べ進めていけばよいでしょうか?

 加熱度の低い調理法(かき玉汁、茶碗蒸しなど)や抗原残存量の多い食品(卵ボーロなど)を最初から与えることは避ける方が無難です。最初は、20分間ゆでた「固ゆで卵黄」を少量与えてみましょう。そのままで食べにくければ、おかゆに混ぜてもよいです。12日ずつ様子を見ながら徐々に増量します。加熱卵黄を安定して食べられれば、次は加熱卵白です。やはり少量から与えてください。加熱卵黄、加熱卵白、加熱度の低い卵、の順にゆっくり進めましょう。

 [4] 他の食物を始める場合、どのように食べ進めていけばよいでしょうか?

 大豆は豆腐から、小麦はうどんから、少量を与えてみましょう。乳製品は、粉ミルクを飲める場合はまず心配いりません。乳児期早期のミルク摂取により1歳での牛乳アレルギーが減少するという報告もあります。生乳やヨーグルトを少量から、離乳食の風味付けに(ヨーグルトはとろみ付けにも)利用するとよいでしょう。

 [5] 食物アレルギーの症状として、何に気をつければよいでしょうか?

 皮膚症状がメインです。皮膚が痒くなったり赤く腫れたりします。元からあった湿疹が悪化することもあります。さらに、呼吸器症状や消化器症状が現れたら要注意です。呼吸が苦しそうだったり喘鳴(ゼーゼー)を生じたりする、吐き続ける、顔色が悪くぐったりしている、などの症状が現れたら、早急に(救急車を利用してでも)医療機関を受診してください。

 離乳食を始めて間もない時期に、口や目の周囲に軽い発疹や発赤が出ることはよくあります。痒みがなく、機嫌がよく、咳や喘鳴や嘔吐がなく、1015分で消失する。そんな場合は慌てなくても平気です。皮膚の発疹や発赤は、食物アレルギーだけでなく、唾液の混じった食物が付着することによる刺激でも生じます。赤ちゃんの身体は食べることにまだ慣れていません。少々のトラブルは付きものです。数日の間隔をあけて、最初の摂取量よりも少量を与えてみてください。多くの場合、大丈夫です。それでも同じ症状が繰り返し現れるようなら、医療機関にご相談ください。