子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症します。日本で毎年、若年層を中心とした女性の約1万人が子宮頸がんに罹患し、約2900人が死亡しています。子宮頸がんがマザー・キラーと称される所以です。そのような状況の中、世界はHPVワクチン接種による子宮頸がん撲滅の活動を展開しています。ワクチン先進国のオーストラリア等では、子宮頸がんは10年後に「稀少がん」としてほとんど見られなくなるだろうと予測されています。一方で、先進国の中で日本だけは「ワクチンの積極的接種勧奨の一時的差し控え」という不合理な施策を数年前から続けていて、世界の潮流から完全に取り残されています。世界保健機関(WHO)は日本を名指しで、「若の女性たちが命の危険に晒されている」と非難し、接種勧奨の再開を強く求めています。
日本でHPVワクチンは、小学6年生から高校1年生までの女子に定期接種(公費負担)として実施されています。決して無くなった訳ではありません。接種後に稀に生じる多様な運動障害や全身症状は「機能性身体症状」と考えられており、接種後の局所の疼痛や不安が主因と推論されています。HPVワクチンとの直接の因果関係は証明されていません。万一の機能性身体症状に適切に対処・治療できるように、神奈川県内で数ヶ所の医療機関が整備されています。
日本で現在、定期接種として2種類、任意接種として1種類のHPVワクチンが認可されています。
○ サーバリックス … 2価(HPV 16、18型)、定期接種
○ ガーダシル … 4価(HPV 16、18、6、11型)、定期接種
○ シルガード9 … 9価(HPV 16、18、31、33、45、52、58、6、11型)、任意接種
子宮頸がんを起こしうるHPVは約15種類あることが知られており、サーバリックスとガーダシルが65〜70%、シルガード9が約90%のHPVをカバーします。シルガード9の予防効果が最も高いといえます。ただし、いずれのワクチンも全種類のHPVまではカバーできませんので、ワクチン接種と20歳からの子宮頸がん検診の二本立てにより、子宮頸がんを予防することが肝要です。
シルガード9は、日本で2021年2月24日に発売されました。すでに世界80ヶ国以上で承認され、35ヶ国以上で定期接種化されています。日本では定期接種として未認可のため、有料接種になります。1回の金額は3万円(プラス消費税3千円)です。3 回接種で10万円近くになってしまいます。高額で申し訳ございません。日本では新しいワクチンであるため、安全性を確保する目的で「ワクチンQダイアリー」というシステムへの全数登録が義務づけられています。接種後の健康状態を被接種者と接種医が共有するシステムです。当院は定期接種を希望される方にガーダシルを、任意接種(有料)でよいとされる方にシルガード9をお勧めしています。対象年齢となるお嬢様がいらっしゃる方は、どうぞご相談ください。