[1] 学校における新型コロナウイルス感染症
文部科学省は12月3日、学校における新型コロナウイルス感染症の調査結果を発表しました(https://www.mext.go.jp/content/20201203-mxt_kouhou01-000004520_01.pdf)。
学校活動が本格的に再開された6月1日から11月25日までの間に、小学校・中学校・特別支援学校における感染者数は2079人、うち有症状者数は894人(43%)、重症者数はゼロという数値でした。全年齢層に占める小中学生の割合は非常に低く重症者がおらず、小児は成人に比べて感染しにくく感染しても重症化しにくい可能性が裏付けられています。その機序として、気管支上皮細胞で新型コロナウイルスの受容体であるACE2の発現が小児で少ないこと、自然免疫応答による防御システムが小児でより効率的であること等が仮説としてあげられています。加えて、各学校における感染拡大防止のための日々の取り組みが功を奏していると思われます。
感染経路は、家庭内感染が小学生で73%、中学生で64%と最多で、学校内か学校以外の活動・交流の場での感染が小学生で17%、中学生で18%でした。大人が家庭内にウイルスを持ち込まないことが小児を守るための最重要事項であることがうかがえます。
学校内での感染者数は、1人にとどまった事例が大半を占め、5人以上に拡大した事例は小学校で0.06%、中学校で0.11%でした。学校内で感染拡大があった場合でも、地域での感染拡大につながった事例は現在までに確認されておらず、小児は感染しても他人に感染させにくいことが示唆されます。
以上、小児は成人ほど深刻な事態に陥っていませんが、だから油断してよいという結論にはなりません。本感染症には不明な点が多くあります。小児の間でも流行が起こりうる可能性を常に念頭に置き、「三密を避ける」「人との間隔を十分とれない時にマスクを着用する」「手洗いの手指衛生に努める」等の感染対策を引き続きしっかり行うことが肝要です。
[2] 新型コロナワクチンの実用化
英国政府は12月2日、国として世界で初めて新型コロナワクチンの広汎な使用を承認しました。12月8日から、ハイリスク者を主対象として接種が開始されます。ワクチンを開発したファイザー社(米国)は、ワクチン接種者の95%を新型コロナウイルス感染症から守れるとしています。
新型コロナワクチンは世界中で待ち望まれており、その効果に大いに期待が寄せられています。ただ、いくつかの点が未解明です。最大の問題は安全性です。一過性の微熱や接種部位の腫れは許容範囲内ですが、時間が経ってみなければ分からない重大な問題が見つかる可能性が無いとは言い切れません。安全性に関しては有効性以上に慎重な評価が求められます。また、長期的な効果の持続や接種して感染した時の重症化阻止効果についても未解明です。いずれもワクチンがかなり普及してからでないと判明しません。感染拡大がより深刻な状況にある欧米ではワクチンの利点が出やすいので、これらの地域での成績を見極めてから日本での導入を検討してもよいと思われます。
ワクチンの実用化は大きな朗報です。しかしそれだけで新型コロナウイルスがいなくなるわけではありません。今冬、日本はワクチンなしで流行を乗り切るしか選択肢はないわけですし、やはり感染対策をしっかり行うことがわが身を守るための最重要事項です。
[3] インフルエンザも要警戒
インフルエンザは、わが国において毎年1000万人以上が罹患し、直接死亡と関連死亡(基礎疾患の悪化などによる)を合わせると毎年1万人前後が亡くなります。新型コロナウイルス感染症と比べると、文字どおり桁違いに(10〜100倍)多い数値です。インフルエンザに関しても、三密の回避、マスク着用、手指衛生が予防に役立ちます。さらにワクチンがあります。今冬は、例年以上にインフルエンザの予防にも力を注ぎたいものです。