今冬、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行が懸念されています。現時点で今後の動向を正確に予測することはできませんが、インフルエンザワクチンを接種して流行に備えておくことは有用です。新型コロナウイルスについても、知識をアップデートして「正しく恐れる」姿勢を保つことが大切と思います。
[1] 新型コロナウイルスは再感染する
新型コロナウイルスに対する免疫の保有期間は約3ヶ月間といわれています。免疫抗体価も中和活性も時間とともに減衰します。したがって、新型コロナウイルスに一度かかったからもう二度とかからないという保証はありません。事実、再感染例が世界中で続々と報告されています。二度目の感染の方が重症であるケースも少なからず報告されています。再感染がどのくらいの頻度で起こるか、どのくらいの割合で重症化するか、肝心のことはまだ分かっていません。
免疫抗体が持続しないということは、ワクチンの効果も一過性である可能性が高いです。インフルエンザワクチンと同様に、毎年の接種が必要になるかもしれません。ちなみに、日本における新型コロナウイルスワクチンの接種開始は来年前半といわれていますが、確かなことはまだ何も決まっていません。
[2] 新型コロナウイルスは無症状者からも感染する
インフルエンザも新型コロナウイルスも、感染した後4〜5日でウイルス増殖のピークに達します。しかし、症状の発現時期は両者で大きく異なります。インフルエンザは潜伏期が1〜2日で、発症後に増殖のピークが訪れます。新型コロナウイルス感染症は潜伏期が5〜6日で、発症前に増殖のピークが訪れます。つまり、新型コロナウイルスは無症状のうちから感染力を有することになります。健康そうに見えても、実は新型コロナウイルスに感染していて、知らないうちにウイルスを散布している可能性があるわけです。
街中で誰が感染しているか分からず、自分も感染しているかもしれない、と考えて慎重に行動するしかありません。マスクを正しく着用することで、自らを守り、他人にうつさないことを心掛けましょう。手をこまめに洗いましょう。十分な睡眠と適度の運動と規則正しい生活により、免疫力を保ちましょう。以上、一般のかぜ対策の応用と捉えればよいと思います。
[3] 新型コロナウイルスの死亡率は低下している
国立感染症研究所の報告によりますと、新型コロナウイルス感染症による死亡率は著しく低下しています。5月と8月の比較では、全年齢層の死亡率は7.2%から0.9%へ、0〜69歳の死亡率は1.3%から0.2%へ、70歳以上の死亡率は25.5%から8.1%へ、それぞれ下がっています。とはいうものの、70歳以上の高齢者の死亡率は依然として高値であり、高齢者を守ることは最重要課題です。ちなみに、日本において20歳未満の死亡者数はゼロです。重症例もきわめて稀です。新型コロナウイルス感染症が若年層で重症化しにくいことは間違いのない事実です。
死亡率が低下した理由は、第一にPCR検査の普及により感染者が広く発見されるようになったためです。以前は重症者に限って検査が行われていましたが、現在は軽症者や無症状者にも検査が行われています。分母が大きくなれば、率は下がります。理由の第二は治療法の進歩です。レムデシビルやデキサメサゾンなど、新型コロナウイルスに有効とされる薬剤が治療に用いられるようになりました。理由の第三として、新型コロナウイルスの弱毒化に期待したいですが、今のところ証明はされていません。ウイルスが今後どのように変異していくか、要注目です。