2020年8月9日

新型コロナウイルスの最新情報/変異、ワクチン、うがい薬

[1] 新型コロナウイルスの遺伝子変異(新・新型コロナウイルス?)
 国立感染症研究所は、新型コロナウイルスの遺伝子解析の結果から、「感染症は5月にいったん収束に向かったものの、軽症者や無症状者の間で密かに受け継がれ、6月以降に再び顕性化して全国に拡散中」と発表しました(8月7日)。報告書によりますと、3月中旬以降に国内で広がったウイルスは、中国・武漢からヨーロッパを経て入ってきた「ヨーロッパ系統」で、5月にいったん収束しました。6月中旬以降に感染が再拡大して現在に至りますが、今度は「ヨーロッパ系統」の遺伝子の一部が変異した新ウイルスが主役です。おそらく軽症者や無症状者による感染が水面下で続いていて、この間に変異を生じたのだろうと推測されます。なお、病原性が強くなったり弱くなったりする変異は確認されていません
 感染者が急増しているにもかかわらず重症者や死亡者が大きく増えないため、ウイルスが弱毒化しているのではないかと期待する言説がありますが、今のところ確たる証拠はありません。第一波では見逃されていた軽症例が、検査体制の拡充により診断されるようになったことが主な理由と考えられます。軽症者は感染を広げやすいので注意が必要です。体調が良くない時は「自分は新型コロナウイルスに感染しているかもしれない」と考えて、外出を控えて療養に努めることが肝要です。

[2] 新型コロナウイルスに対するワクチン(安全? 有効?)
 世界各国の研究機関や製薬企業がワクチンの早期開発に挑んでいます。ワクチンの基礎研究から実用化までの期間は通常10〜15年とされています。もしも1〜2年で完成するとしたら、驚異的なスピードです。それだけに安全性や有効性が十全に保証されたものとは言い難く、あくまでも緊急用に認可されたワクチンと捉える必要があります。予期せぬ副作用が起こる、投与によりかえって重症化する(「免疫増強」という現象)などのリスクも考慮しなければなりません。獲得した免疫がどのくらい持続するかも分かっていません。
 いくつかの懸念と課題はあるものの、ワクチンが新型コロナウイルス感染症を征圧する重要な手段であることは間違いありません。日本政府は米国ファイザー社と英国アストラゼネカ社から各々1億2千万回分の供給を受けることで合意を取り付けました。国内の企業(塩野義製薬など)も来年の実用化に向けた治験を進めています。ワクチンの接種開始が待ち望まれます。

[3] 新型コロナウイルスに有効なうがい薬?
 大阪府知事が「イソジンなどのうがい薬が新型コロナウイルスの感染予防になる可能性がある」と発言した途端、ドラッグストアの店頭からイソジンが消え去る騒ぎになりました。しかし現時点で、信頼に足る科学的根拠は提示されていません。WHOも「根拠はない」との公式見解を出しています。うがい薬は口腔内の特定の微生物を数分間除去しますが、だから新型コロナウイルスに有効であるとの推論は飛躍しすぎています。うがい薬に限ったことではなく、「新型コロナウイルスに効く」を謳うサプリメントや食品は全て眉唾ものです。科学的証拠は何もありません。首さげ型の空間除菌グッズも、感染防御の役に立ちません。消費者庁から度重なる警告が発せられています。
 感染予防の要点は、 (1) 三密を避けること、(2) 手洗いをしっかり行うこと、(3) 咳エチケットを守ること、(4) 体調不良時は外出を控え療養すること、の四点です。手洗いはとくに重要です。ダイヤモンドプリンセス号の環境調査で、部屋のさまざまな場所の検体を採取したところ、浴室49%、枕34%、電話機24%、TVリモコン21%、机21%からウイルスが検出されました。新型コロナウイルス感染の主要経路は、唾液などからの飛沫感染に加えて、手指を介した接触感染です。しっかり手を洗うこと、手を触れる機会の多いものをこまめに清拭することを心がけましょう。