2020年8月30日

新型コロナウイルス感染症に伴う子どもの心身症

 新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから、ほぼ半年が過ぎました。この間、子どもたちは「普通でない」生活を強いられてきました。全国一斉の休校措置、家庭内での補習学習、短い夏休み、過密なカリキュラム、各種イベントの中止、感染防御のための細々した決まり事など、子どもたちにとってストレスの多い環境が長く続いています。今のところ事態の収束を見通すことができません。

 心理社会的刺激(ストレス)が子どもたちに与える影響は小さくありません。当院において4月以降、心身の不調を訴える子どもが急増しています。おそらく心因反応にもとづくと思われる、頭痛、食欲不振、腹痛、倦怠感、息苦しさ、不眠、めまい、チック症(まばたき、声出し、首振り)、登校困難などの諸症状を呈する子どもたちを数十人ほど診てきました。当院は情緒安定作用を有する漢方薬を積極的に使用して、多彩な症状を緩和することに努めています。漢方薬は西洋薬(向精神薬)と異なり、副作用がほとんどなく依存性を生じないため、子どもにも安心して使用することができます。ただし薬だけで全てを解決することはできません。環境を変える努力が求められます。

2020年8月9日

新型コロナウイルスの最新情報/変異、ワクチン、うがい薬

[1] 新型コロナウイルスの遺伝子変異(新・新型コロナウイルス?)
 国立感染症研究所は、新型コロナウイルスの遺伝子解析の結果から、「感染症は5月にいったん収束に向かったものの、軽症者や無症状者の間で密かに受け継がれ、6月以降に再び顕性化して全国に拡散中」と発表しました(8月7日)。報告書によりますと、3月中旬以降に国内で広がったウイルスは、中国・武漢からヨーロッパを経て入ってきた「ヨーロッパ系統」で、5月にいったん収束しました。6月中旬以降に感染が再拡大して現在に至りますが、今度は「ヨーロッパ系統」の遺伝子の一部が変異した新ウイルスが主役です。おそらく軽症者や無症状者による感染が水面下で続いていて、この間に変異を生じたのだろうと推測されます。なお、病原性が強くなったり弱くなったりする変異は確認されていません
 感染者が急増しているにもかかわらず重症者や死亡者が大きく増えないため、ウイルスが弱毒化しているのではないかと期待する言説がありますが、今のところ確たる証拠はありません。第一波では見逃されていた軽症例が、検査体制の拡充により診断されるようになったことが主な理由と考えられます。軽症者は感染を広げやすいので注意が必要です。体調が良くない時は「自分は新型コロナウイルスに感染しているかもしれない」と考えて、外出を控えて療養に努めることが肝要です。