2018年4月12日

幼稚園、保育園の感染症対策(第二編)

 一昨年に執筆した「幼稚園・保育園での感染症対策」の続編です。新年度が始まり、風邪にかかる子どもたち(特に新入生)が徐々に増えてきました。狭い空間で長い時間にわたり一緒に過ごす幼稚園・保育園は、子どもの免疫能が未だ成熟していないことと相まって、感染が拡大しやすい環境にあるといえましょう。今回は、集団生活に大きな影響力をもつ感染症とその対策について解説いたします。

 学校保健安全法で出席停止が定められている感染症などについて、日本小児科学会・予防接種感染症対策委員会の資料(2017年4月改訂版)をもとに、① 感染経路、② 感染拡大防止策、③ 感染期間、④ 出席停止期間を記します。これらの感染症にかかった子どもは、症状が回復し感染力が減少するまでの間、登園・登校を避けることが指導されています。

 インフルエンザ;① 飛沫、接触(不顕性感染や軽症例あり)、② 咳エチケット、手洗い、流行時の学級閉鎖、③ 発熱1日前から発熱3日目をピークとし、7日目頃まで、④ 発症後5日、かつ解熱後2日(乳幼児は解熱後3日)
 百日咳;① 飛沫、接触、② 咳エチケット、手洗い、乳児(0歳児)と接触しない、③ 咳の出現から4週間(抗菌薬の投与7日で感染力は弱まる)、④ 特有の咳が消失するまで、または抗菌薬5日間投与後
 水痘(水ぼうそう);① 空気、飛沫、接触、母子(胎内)感染、② 感染力が強いため隔離だけでは拡大防止は困難、③ 発疹出現1〜2日前から、すべての発疹が痂皮化するまで、④ すべての発疹が痂皮化するまで
 ムンプス(おたふくかぜ);① 飛沫、接触(不顕性感染あり)、② 不顕性感染があるため隔離だけでは拡大防止は困難、③ 耳下腺腫脹1〜2日前から、耳下腺腫脹5日後まで、④ 耳下腺腫脹5日が経過し、全身状態が良好になるまで
 麻疹(はしか);① 空気、飛沫、接触、② 感染力が強いため隔離だけでは拡大防止は困難、③ 発熱1日前から発疹出現4日後まで、④ 解熱後3日を経過するまで
 風疹(三日はしか);① 飛沫、接触(不顕性感染あり)、母子(胎内)感染、② 不顕性感染があるため隔離だけでは拡大防止は困難、③ 発疹出現7日前から出現7日後まで、④ 発疹が消失するまで
 咽頭結膜熱(アデノウイルス);① 飛沫、接触、プール、② 手洗い、眼脂等の付着物の消毒、③ 症状(発熱や眼球充血)のある数日間、④ 主要症状の消失後2日を経過するまで
 急性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス);① 経口、飛沫、接触、② 流水下の石鹸での手洗い、嘔吐・下痢便の付着物の消毒、③ 症状(嘔吐、下痢など)のある間と症状消失後1週間、④ 症状の消失後、普通の食事ができること

 これらの感染症の中には不顕性感染例や軽症例が含まれるため(それでも感染力はあります)、また、症状が出現する前から感染力を発揮する病原体が多いため、衛生管理をしっかり行っていても、侵入と流行を完全に阻止することはできません。大切なことは流行時に拡大を最小限にとどめることであり、咳エチケットや手洗いは基本中の基本となる対策です。ワクチンを接種して感染症にかからないことも、効果的な感染防御対策です。ワクチンに勝る予防法はないと言えます。一覧表にあげた感染症のうち、アデノウイルスとノロウイルスを除き、ワクチンが存在します。親御さんは、接種すべきワクチンを我が子が済ませているかどうか、入園前に再点検しておきましょう。

 症状が消失し出席停止期間が済んだ後も、インフルエンザ、ノロ、ロタ、アデノなどの各ウイルスは、体内からの排出が続いていることがあります。だからといって出席停止や隔離を延々と続けることは現実的ではなく、登園・登校は許可されますが、感染源になる可能性はまだありますので、咳エチケットの気遣い、タオル共用の禁止、胃腸炎(下痢、嘔吐)の場合はオムツ処理後の十分な手洗いなど、衛生管理を引き続き行うことが推奨されます。