2015年3月22日

水いぼの話

 乳幼児によく見られる水いぼ。水いぼがあると、うつるからプールに入ってはいけない、すぐに医者にかかって取ってもらいなさい、という話を耳にします。本当にそうでしょうか。今回はいろいろと誤解の多い、水いぼについて解説いたします。

 水いぼは、伝染性軟属腫ウイルスによって起こる皮膚の感染症です。皮膚が薄くて免疫が未熟な乳幼児に好発します。ウイルスの主な感染経路は肌と肌の接触ですが、タオルやビート板などの物を介してうつる場合もあります。ただし、水を介してうつることはありません。症状が出るまでの潜伏期間は14〜50日です。水いぼが1個できると、その近くに数個増え、さらに水いぼを引っ掻いた指で別の箇所を掻くとそこにも新たに水いぼができます。水いぼ自体に痛みや痒みはありませんが、乾燥肌やアトピー性皮膚炎を有する子どもは皮膚を掻くことが多く、そのために水いぼが遠くの皮膚にも飛び火しやすいです。

 水いぼの確実な治療法はありません。一般的に行われているのは、専用のピンセットで水いぼを摘み取る方法です。小児科ではあまり行われず、皮膚科にお願いすることになります。水いぼの数が少なければ、摘み取る際の痛みも軽くて済みます。したがって、出始めたら早めに摘み取ってしまうのも一法です。しかし、一回の治療で完治すればよいのですが、すでに感染していたウイルスが潜伏期間の後にまた出てくることもあります。いくら摘み取っても後から後から出てくるような難治性の場合、あるいは多数の水いぼが散在していて摘み取るのが大変な場合、漢方薬(薏苡仁)を服用しながら自然治癒を待つ方法もあります。伝染性軟属腫ウイルスに感染すると、身体は免疫反応を用いてウイルスを排除しようとします。漢方薬には皮膚のウイルス感染に対する免疫反応を後押しする作用があります。ただし服用したから必ず効くというわけではなく、報告によって差がありますが、約3〜7割の有効率です。何もしないで自然治癒を待つと半年から1〜2年かかるので、漢方薬はとりあえず試してみてもよい治療法でしょう。漢方薬は小児科でも処方できます。以上、水いぼには治療法の選択肢がいくつかあり、どれも決め手に欠くのが実情です。最終的には、保護者の判断で(保育所・幼稚園の指示ではなく)、対応を決めていただくことになります。

 水いぼにかかっても。保育所・幼稚園・学校を休む必要はありません。また、水を介してうつらないため、プールに入っても構いません。平成11年に学校保健法が一部改正され、水いぼを理由にプールを禁止する必要はないことが明記されました。厚生省保育課も「子どもにストレスのかかるプール禁止は行き過ぎ」と説明しています。日本臨床皮膚科医会も同様の勧告を出しています(http://www.jocd.org/pdf/20130524_01.pdf)。しかし保育所・幼稚園の対応が一定しておらず、混乱が生じています。プールを禁じている保育所・幼稚園は、学校保健法などを読み直していただきたいと思います。水いぼがあってもプールに入って構わないのですが、互いの皮膚の接触でうつらないための配慮は必要です。水着・タオル・ビート板・浮き輪は共用しないようにしましょう。水着で覆われていない箇所の水いぼは、水をはじくタイプの絆創膏で覆っておきましょう。水いぼを悪化させないために、プールから出た後はシャワーを浴びて皮膚を清潔に保ちましょう。また、感染の機会はプールだけでなく日常生活の中にもあり、プールだけを危険視しても意味がありません。露出した水いぼの被覆は、集団生活を送る際のエチケットと言えましょう。