2019年6月3日

イオン飲料の多飲によるビタミンB1欠乏症

 イオン飲料の多飲による「ビタミンB1欠乏症」に対する警告が、日本小児科学会から発表されました。その詳細をお伝えいたします。

 ビタミンB1は、生体のエネルギー産生の補酵素として重要な役割を果たしています。体内のビタミンB1が欠乏すると、乳酸など有害物質の蓄積とエネルギーの産生障害をきたし、全身のさまざまな臓器の機能障害を生じます。代表的な病気は、ウェルニッケ脳症(意識障害、眼球運動障害、失調)と脚気(心不全、浮腫、腱反射消失)です。古来、成人において、過度の飲酒とそれに伴う低栄養がビタミンB1欠乏症を起こすことがよく知られていました。現在は、小児において、イオン飲料の多飲とそれに伴う低栄養(または偏食)からビタミンB1欠乏症に至るケースがたびたび報告されています。

 日本小児科学会による全国実態調査で、イオン飲料の多飲によりビタミンB1欠乏症に陥った33例の情報が集まりました。多飲が始まった平均年齢は生後10ヶ月。1日あたりの摂取量はほぼ全例で1000ml以上。診断に至った年齢は生後7ヶ月〜2歳11ヶ月。多飲のきっかけは、子どもが好むため、水分補給のため、離乳食が進まないため、医師が勧めるため、などでした。食事をまともに摂取していない、偏食が激しいなど、食生活に問題のあるケースがほとんどでした。ビタミンB1欠乏による症状は、嘔吐、意識障害、活気不良、浮腫、体重増加不良、腱反射減弱、筋力低下、眼球運動障害、痙攣などでした。小児の場合、ウェルニッケ脳症や脚気などの典型的症状を呈する者は少なく、非特異的な症状を呈する者が多いため、診断までに時間を要する傾向にありました。転帰が判明した27例のうち、1例が心不全で死亡し、12例に後障害(知的障害、運動障害など)が認められました。ビタミンB1欠乏症をいったん発症すると、予後がきわめて悪いことがうかがえます。

 ビタミンB1欠乏症は、発症の予防が重要です。平素の食生活が健全に保たれているかどうか、ときどき意識してみてください。イオン飲料が「健康によい」「ビタミンが豊富」「多量に飲んでも安全」ということは決してありません。あくまでも病気のとき、とくに胃腸炎に伴う嘔吐・下痢により体内の水分と塩分が不足しているときに限って飲む飲料です。水やお茶の代わりに常用してはいけませんし、母乳やミルクの代用品にはなりません。

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