2019年6月24日

子どもの弱視 〜早期発見の重要性〜

 子どもの視力は生まれた時から大人並みということはありません。視覚刺激を繰り返し受けることで徐々に伸びていきます。生まれたばかりの赤ちゃんは、明るいか暗いかを区別するだけです。生後1ヶ月で物の形が、生後2ヶ月で色が何となく分かるようになります。1歳で0.2くらいの視力になり、3歳までに急速に伸びて、3歳で0.6〜0.9、5歳で1.0以上になります。この時期は視覚の発達期とよばれています。

 視覚の発達期は、視覚の感受性期(刺激に反応する期間)と言い換えられます。感受性は生後3ヶ月から1歳半までが最も高く、以後3歳まで高い状態が続き、8〜10歳で消失します。この期間に適正な視性刺激を受けないと、視力が伸びずに弱視になってしまいます。年齢が大きくなり感受性期を越えてから治療を始めても、回復は望めません。したがって、乳幼児期にたえず眼を使って物を見ることが視力の発達に大切で、もしも物を見る事を妨げる要因があればできるだけ早くそれを取り除かなければなりません。

 弱視を起こしうる眼の異常は、斜視、屈折異常(近視、遠視、乱視)、形態覚の遮断(先天性眼瞼下垂、先天性白内障など)の三つに大別されます。これらの中で、(1) 斜視、(2) 片眼の屈折異常、(3) 斜視+片眼の屈折異常が三分の一ずつを占めていて、弱視の大半が「片眼弱視」ということになります。弱視の子どもは50人に1人の割合でいます。意外に高い数値だと思われませんか? 片眼が見えていないと(両眼視ができないと)遠近感や立体感を得ることができず、立体視の発達が妨げられます。また、健側の眼が何かの原因で損なわれたら、視力を失うおそれがあります。

 3歳までに弱視を発見できると視力はかなり回復します。わが子の眼に異常がないかどうか、ときどき注意を向けてください。片眼を隠すといやがる、眼を細めて物を見る、近づいて物を見る、首をかしげて物を見る、などの仕草は異常の存在を示唆します。しかし幼児は見えにくいことを自分から訴えませんし、視力が0.2あれば不自由なく行動できますし、片眼の視力が良好であれば生活に支障をきたしません。家庭での早期発見はなかなか難しいのが実情です。

 弱視を早期に発見するために、フォトスクリーナーが注目されています。フォトスクリーナーとは、瞳孔の写真を撮影することで斜視や屈折異常を検出する検査機器です。当院が本年4月に導入したスポットビジョンスクリーナー(SVS)は、特別な準備なしに簡単な操作で10秒以内に、もちろん子どもに侵襲を与えることなく、斜視、近視、遠視、乱視を判定することができます。主に乳幼児健診(生後8ヶ月児、1歳6ヶ月児)で用いていますが、眼の異常が気になる方にも検査を提供しています。2ヶ月あまりで、数名に異常が見つかりました。ただし、検査で陽性だからといって必ずしも異常があるとは限りません。検査陽性者の中で本当に弱視があると診断されるのは58%に過ぎないという報告があります。SVSはスクリーニング検査ですので、ある程度の大雑把さは避けられません。検査で陽性と言われても慌てずに、あらためて眼科を受診することをお勧めします。当院は久志本先生(久志本眼科クリニック)、和田先生(長後駅前眼科)と連携を取り合い、陽性者の精密検査をお願いしています