2019年2月12日

小児医療における迷信 (2)

 前回のコラムの続きです。子どもの健康に関わる商品がいろいろ売られていますが、中には医学的におかしい!と思うものも少なくありません。今回はその代表例を二つあげましょう。

[4] 牛乳を飲むと背が伸びる???
 「身長を伸ばす効果がある」と謳うサプリメントが世の中に多く出回っています。しかし、医学的に有効性が証明されているサプリメントは一つもありません。
 カルシウム製剤は、骨を強くしますが、身長を伸ばす効果はありません。「牛乳をたくさん飲むと背が伸びる」は迷信です。背を伸ばすための栄養の主成分は、カルシウムではなく蛋白質です。牛乳には少量の蛋白質しか含まれていません。では、蛋白質ばかり食べたら背が伸びるかというと、そう単純ではありません。蛋白質を身体に定着させるためには、糖質や脂質の働きも必要です。つまり当たり前の話ですが、バランスのよい食事を摂取することが肝要です。
 「成長ホルモンの分泌を促進する」サプリメントはすべて眉唾物です。有名なアルギニンを例にとりましょう。成長ホルモン分泌刺激試験に用いるアルギニンは、30kgの子どもなら15gを30分かけて点滴静注することで成長ホルモンの一時的な分泌を促します。サプリメントに含まれる1〜2gのアルギニンを服用しても、成長ホルモンの分泌刺激にはなりません。これを長期間服用して背が伸びたという科学的データは存在しません。成長ホルモンを含むスプレーも眉唾物です。鼻咽腔や消化管の粘膜から吸収される(ほとんど吸収されない)ごく微量で効果が現れるはずがなく、これで背が伸びたという科学的データも存在しません。テレビやネットなどの媒体を通じて、あたかも魔法の薬のように宣伝されている健康食品は怪しいと思ってください。
 筋トレをすると背が伸びない、バレーボールやバスケットボールをすると背が伸びる、鉄棒にぶら下がると背が伸びる、などもすべて迷信です。「寝る子は育つ」はそれなりに真実ですが、では長く寝るほど背が伸びるかというと、そこまでの効果は期待できません。これまた当たり前の話ですが、「早寝、早起き、朝ごはん」の良い生活習慣を身に付けることが肝要です。

[5] 空間除菌グッズが風邪を防いでくれる???
 二酸化塩素の効果で生活空間の除菌ができると謳う商品が世の中に多く出回っています。しかし、首から提げても室内に置いても除菌効果は全くありません。詐欺まがいの商品です。「空間除菌」の他にも「インフルエンザ対策」「ウイルス除去」「花粉対策」など様々な宣伝文句が付いていますが、いずれも科学的な根拠はまったくありません。過大広告が目に余ったため、2014年に消費者庁は景品表示法にもとづく措置命令を各業者に下しました。しかし5年たった今も、これらの商品は絶滅することなく、しぶとく売られ続けています。
 二酸化塩素にはたしかに殺菌作用があります。水道施設の上水処理や米・小麦の殺菌消毒に用いられます。しかし十分な殺菌能力を発揮するには、液体で数百ppmの濃度が必要です。この濃度に人体が曝されたら、粘膜などに炎症(やけど)を起こしてしまいます。では空間除菌グッズのように気体で用いたらどうか? あっと言う間に空気中に拡散して、有効な濃度を維持できません。濃いと危険、薄いと無意味。こんなものが商品として流通していることが不思議です。
 そもそも人間の体内には、ウイルスや細菌が常に取り込まれています。わたしたちの免疫機構は日々絶え間なく、ウイルスや細菌と闘っているのです。除菌グッズなどあってもなくても同じです。風邪をひくかどうかは、ウイルスや細菌の量・病原性と身体の免疫力にかかっています。ウイルスや細菌の増殖を防止するには、手洗いやうがいなどの衛生に加え、健康的な生活(適切な栄養と睡眠)を送り体調を良好に保つこと。これらに勝る健康法はありません。

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