2020年4月12日

新型コロナウイルス感染症への対応(第9報)

[1] 緊急事態宣言:私たちにできること
 4月7日に緊急事態宣言が出されました。新型コロナウイルスの爆発的流行の瀬戸際にあって、私たちにできることは「不要不急の外出を避け、特に密閉・密集・密接の場所に行かないこと」「咳エチケットと手洗いを励行し、ウイルスをもらわない・わたさない意識を持つこと」です。若い人たちは、感染しても軽症で済む可能性が高いため危機感が薄いかもしれません。しかし、若い人も一定の確率で重症化しますし、高齢者や基礎疾患保有者など重症化しやすい人たちへの感染源になり得ます。今は我慢する時だということを、ぜひ理解していただきたいと思います。
 外出が全面的に禁止されているわけではありません。子どもの心身の発達にとって、外遊びは大切です。ルールを決めて感染リスクを下げて、公園などで遊ぶことは大丈夫です。風邪症状がある時は外出しない、他人との距離を保つ(人混みに近寄らない)、遊具に触れた手を口・鼻・目にもっていかない(こまめに手洗いする)などを心がけて、子どもと一緒の時間を楽しく過ごしていただきたいです。このような非常時こそ、親子の絆を強める好機と捉えましょう。

 [2] フェイクニュース:テレビ、インターネットの危うさ
 新型コロナウイルス関連のニュースが、朝から晩まで途切れることなく流れています。しかしテレビの映像が必ずしも真実を伝えるとは限りません。そもそも新しい未知のウイルスに関して、本当の専門家はいません。素人同然のコメンテーターが訳知り顔で論評し視聴者の不安や苛立ちを煽り立てるワイドショーは、所詮は視聴率稼ぎを目的とするエンターテインメントに過ぎないと思います。専門家を名乗る人物がいても、やはり信用できません。本当の専門家なら、テレビに長時間出演している暇など無く、現場の第一線で活動しているはずです。
 インターネットの情報は、さらに注意が必要です。インターネットは誰もが発信できるため、真実と虚構が混じり合う世界です。署名や出所が見当たらない記事の多くは、不確かな憶測で書かれていると考える方がいいです。中には悪質なデマも含まれます。怪しげな情報に触れない・関わらないことが肝心です。公的な組織(官公庁、学術団体、公益団体)と信頼できる医療機関から発せられた記事は、おおむね信用してもよいでしょう。洪水のようにあふれかえるメディアの情報をそのまま鵜呑みにせず、真偽を見分けるための健全な批判精神を持ちたいです。

[3] 風評被害:医療従事者への心ない誹謗中傷
 われわれ医療従事者は、日常診療の現場で新型コロナウイルスと対峙しています。感染する危険を背負いながらも、医療の使命を全うすることに努めています。もちろん、感染防御の対策と自己の健康チェックはしっかり行っています。
 残念なことに、医療従事者への風評被害が各地で起きています。不安や苛立ちに駆り立てられた人たちが、その捌け口を求めているのでしょうか。先々月、新型コロナウイルス感染者を受け入れた県内の病院で、医療従事者の子どもが託児所への預かりを拒否されたり、感染者と接触のあった職員の住所氏名や通勤経路を探るSNSの投稿があったり、人権侵害にあたる行為が続出しました。一部メディアの報道は、まるで犯罪者を扱うようでした。いわれのない差別や偏見は断じて許されません。風評被害によって医療従事者が不要なストレスに悩まされたり、医療機関が本来の役割を果たせなくなったりすれば、地域の医療体制は大きな影響を受けることになります。事実、その病院は救急車の受け入れが一時的にできなくなり、地域の救急医療体制が崩壊の危機に瀕しました。ひとりひとりが賢明に考え、不確かな情報に惑わされず、他者を決して傷つけないように、冷静な判断と行動を心がけていただきたいと切に願います。