2013年3月14日

PM2.5の正体に迫る

 中国で発生した微小粒子状物質(PM2.5)が日本に飛来し、環境汚染を引き起こしています。PM2.5とは、大気中に浮遊する直径2.5μm以下の小さな粒子のことです。その成分として、元素状炭素(黒いスス)、有機炭素、窒素化合物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、アンモニア、重金属など様々な物質が含まれています。その起源は、工場の排煙やディーゼル車の排気ガスなどの人工産物のほかに、土壌の粉塵や火山活動などの自然現象もあります。また、家庭内では喫煙やストーブなどから発生します。PM2.5は粒子のサイズが非常に小さいため(髪の毛の30分の1、スギ花粉の15分の1)、肺の奥深くまで入りやすく、喘息や気管支炎などの呼吸器疾患を引き起こす可能性があります。さらに、肺がんや循環器疾患の誘因にもなります。

 わが国では大気汚染防止法に基づき、全国500ヶ所以上でPM2.5の常時監視体制が敷かれています。大和市内にも2ヶ所の測定局が設置されています。測定結果(1日平均値)は翌日に公開されます(神奈川県ホームページ http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp/taiki/pm25.html または電話 045-210-5980)。大気中のPM2.5濃度が70 μg/m3を超えると健康への影響が現れる可能性が高くなります。朝のPM2.5濃度をもとに、その日の平均値が70 μg/m3を超えるおそれがあると判断されると、防災無線やPSメールで注意が換気されます。注意喚起の内容は「不要不急の外出をできるだけ減らす、屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らす、屋内で換気や窓の開閉を必要最小限にする、呼吸器系や循環器系の疾患のある人(病弱者)・子ども・高齢者は体調に応じてより慎重に行動する」となっています。なお、病弱者・子ども・高齢者はPM2.5への感受性が高いので、環境基準値とされる35 μg/m3を超えたら注意が必要です。ちなみに、大和市内における今年(3月14日まで)の観測値は3.1~33.7 μg/m3(平均値 13.4、中央値 11.7)にとどまり、一日も環境基準を超えていません。大気中のPM2.5に関して、今のところ問題はないようです。これに比べて、中国の北京市で観測される100~600 μg/m3という数値はきわめて異常です。病弱者・子ども・高齢者に健康被害が激増することが懸念されています。

 大気中のPM2.5はとりあえず大丈夫ですが、身近なところにPM2.5濃度が非常に高い場所が存在します。喫煙可能な室内です。タバコを吸う家族がいると、住居内のPM2.5濃度は大きく上昇します。大阪市の調査によりますと、喫煙者がいない家庭では20 μg/m3であるのに対し、喫煙者がいる家庭では50 μg/m3前後に達します。自由に喫煙できる居酒屋では568 μg/m3という驚くべき数値も出ています(北京市と同レベルです)。喫煙者の健康被害はともかく、タバコを吸わない家族(特に子ども)までがPM2.5の危険にさらされることは大きな問題です。さらに良くない点は、大気中のPM2.5よりもタバコの煙の方が、有害性が高いことです。タバコの煙の中には、約70種類の発がん性物質が含まれています。空気清浄機を使っても、タバコのPM2.5を取り除くことはできません。また、屋外でタバコを吸っても、呼気に含まれたり衣服に付着したりして室内に持ち込まれます。室内外を完全禁煙にしないかぎり、PM2.5から身を守ることはできません。わが国におけるPM2.5対策の最大の焦点は、一日の大半を過ごす屋内での受動喫煙をいかに無くすかにあると思います。