2020年4月15日

思春期に生じやすい鉄欠乏性貧血

 小児で鉄欠乏性貧血が起こりやすい時期は、鉄の需要が急速に増大する離乳期と思春期の二回です。前回のコラムで、赤ちゃんの脳に鉄分を補給することの大切さを解説しました。今回は、育ち盛りの思春期における鉄分補給の重要性を解説いたします。

 成人は1日に約1.5mgの鉄を消費します。これを補うために1日の食事から約12mgの鉄を摂取しなければなりません。身体が一気に大きくなる思春期は、鉄の必要量がさらに増加します。女子は月経が始まるため、失う量も増えます。思春期は鉄欠乏性貧血を生じやすい時期といえます。中高生女子の10%、男子の3〜5%が、鉄欠乏性貧血の要治療者または要注意者とされています。

 鉄欠乏性貧血を生じやすい条件がいくつかあります。(1) 朝食を抜く人、偏食をする人、間食をとり過ぎる人、不適切なダイエットをしている人 → 鉄の供給量が足りません。(2) 月経の量が多いか日数が長い人 → 鉄が多く失われます。(3) スポーツをする人 → 大量の発汗で鉄が失われたり、筋肉量が増加して鉄の需要が高まったり、足裏の毛細血管内で赤血球が壊れたりします。

 鉄欠乏性貧血を早期に発見することは難しいとされています。よく知られている症状である、顔や口唇が青白い、眼瞼結膜(下まぶたの内側)が白い、口の端が切れやすい、味覚がおかしい、爪が匙状に変形する、爪が割れやすいなどは、貧血がある程度進行してから現れます。意外に知られていないのは、氷を好んで食べること。鉄欠乏性貧血の約半数に見られる症状で、診断の手がかりになります。むずむず脚症候群も、鉄欠乏性貧血との関連が指摘されています。下肢に不快な異常感覚が生じて眠れない時、鉄が不足しているかもしれません。また、他の病気かもしれないけれど貧血でも見られる症状として、集中力や注意力の低下、倦怠感(だるい、疲れやすい)、情緒不安定(苛々しやすい)があります。勉強しているのに学業成績が伸びなかったり、練習しているのに記録が向上しなかったりしたら、貧血が隠れている可能性があります。一生懸命に努力しているけれども報われない、何か変だなと感じたら、お気軽にご相談ください。鉄欠乏性貧血における最も確実な診断法は血液検査です。当院で実施しています。
 鉄欠乏性貧血の予防法は1日3回の食事です。鉄は肉魚類に含まれるもの(吸収率15〜25%)と野菜に含まれるもの(吸収率5%)の2種類があります。野菜はビタミンCを一緒にとると吸収されやすくなります。レバー、赤身の肉、赤身の魚(マグロ、カツオ)、アサリ、厚揚げ、ひじき、パセリ、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、きな粉、プルーンなどが、鉄分の補給用食品として推奨されます。反対に、牛乳の飲み過ぎは鉄欠乏の原因になるため、1日400〜500mL以下に抑えてください。また、鉄を多く含むサプリメントを過剰に摂取することは危険です。鉄中毒を起こすと、痙攣や意識障害、重度の低血圧(ショック)を生じて生命に危険が及びます。

 鉄欠乏性貧血と診断されたら、食事療法だけでは解決しません。鉄剤の内服が必要です。軽い貧血なら鉄剤を1ヶ月ほど飲めば治りますが、予備の鉄を貯蔵するために、さらに2ヶ月ほど飲み続ける必要があります。鉄剤の副作用として、消化器症状(吐き気、便秘、下痢など)を生じることがあります。剤形や服用時間を変更したり、症状を楽にする薬(胃腸薬や下痢止め)を併用したりしつつ、負担が少ない治療を勧める工夫をします。

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