2016年5月19日

夜泣きの原因の一つは腸内細菌の乱れ !?

 このコラムは「赤ちゃんは泣くのが仕事」(2005年10月)と合わせてお読みください。

 いろいろと謎の多い夜泣きですが、その原因の一つとして最近、注目を集めているのが、腸内細菌叢のアンバランス。その鍵を握るのが、乳酸菌の一種であるロイテリ菌(ラクトバチルス・ロイテリ)です。

 ヒトの腸内には数百種、数百兆個の腸内細菌が棲息しています。腸内細菌の主な働きは、病原体の侵入を防ぐ、食物繊維を消化する、ビタミンを合成する、腸管免疫を司る、など多岐にわたります。腸内細菌なくして、ヒトは健康を保てません。赤ちゃんは生まれた瞬間から2歳頃までの間に、大人と同程度の腸内細菌叢を作り上げます。

 ロイテリ菌は主に母乳を介して腸内に送り込まれます。しかしロイテリ菌が不足して腸内細菌叢のバランスが悪くなると、何らかの機序を介して、赤ちゃんは激しい腹痛(疝痛またはコリックとよばれます)を感じて大泣きするようです。これが夜泣きの一因と考えられています。

 ロイテリ菌の投与が夜泣きをどれだけ改善するか? カナダの専門医チームが実施した臨床試験では、ロイテリ菌の製剤を21日間にわたって投与された赤ちゃんのグループ(24例)は、試験開始時点と比べて大泣きする時間が50%以上減ることが明らかにされました(J Pediatr 2015; 166: 74)。ただし大泣きが “減った” だけで、完全に消えたとは記されていません。また、既存の6本の論文(423例)を合わせたメタ解析では、「ロイテリ菌の効果は期待できそうだが、なお検討の余地がある。さらに質の高い研究を求めたい」と結論づけられています(PLoS One 2015; 10: e0141445)。

 ロイテリ菌を補充するサプリメント・シロップは日本でも発売されており、赤ちゃんの夜泣きに悩む親御さんは、とりあえず試してみてもよさそうに思います。これで夜泣きとサヨナラできれば、とても嬉しいことです。しかし、夜泣きを解消する決定打になるかと尋ねられたら、「すべての赤ちゃんに効くのか? 夜泣きが完全になくなるのか? そもそも本当にロイテリ菌の不足だけが問題なのか? という点で、まだ百パーセントの信頼をおける段階にはない」と答えます。今後の臨床研究の推移を見た上で、最終的な結論を出したいと考えています。

 以前にコラムで紹介した漢方薬(甘麦大棗湯または抑肝散)は、夜泣きの解消に良好な成績をあげており、こちらは親御さんにしばしばお勧めしています。

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