神経発達症(以前は発達障害と呼称されていました)は、脳神経の一部の先天的な機能障害にもとづく疾患です。疾患よりも「特性・特質」と捉える方が適切と思われます。神経発達症はいくつかのタイプに分類さます。(1) 限局性学習症、(2) 注意欠如・多動症、(3) 自閉スペクトラム症 の三つが代表例です。自閉スペクトラム症は聞き慣れない言葉ですが、自閉的な傾向の程度(薄い人から濃い人まで)に大きな幅があることから、連続体(スペクトラム)の表現が用いられます。(4) 知的発達症(知的障害)も広い意味で神経発達症に含まれます。(2) (3) (4) の特徴・症状は重なり合い、一人で複数を合わせ持つこともあります。
2025年8月16日
2025年7月16日
五苓散(ごれいさん)は小児医療に欠かせない漢方薬です
漢方薬は、複数の生薬(植物の根・茎・果実、鉱物、動物などを加工したもの)を配合して作られる薬剤で、身体にもともと備わっている自然治癒力(病気を治す力)を後押しする働きがあります。当院の日常診療は西洋医学を基本としていますが、漢方薬の方が優れた効果を期待できる場合や、西洋薬で十分な効果を得られない場合(あるいは西洋医学に治療法が無い場合)に、漢方薬を積極的に使用しています。漢方療法の中で最も重宝する薬剤の一つが五苓散(ごれいさん)です。今回のコラムで五苓散について解説いたします。
2025年7月4日
胃腸に症状が現れる食物アレルギー FPIES(エフパイス)
食物アレルギーといえば、食物を摂取してから1時間以内に生じる皮膚症状(発赤、蕁麻疹)や呼吸器症状(咳、喘鳴)がよく知られています。即時型反応とよばれます。他方、非即時型反応の一つとして、食物を摂取してから1〜4時間後に消化器症状(嘔吐、下痢)が現れる「食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES、エフパイス)」が最近、注目を集めています。以前は稀な疾患とされていましたが、報告数が増えたことにより、2012年から食物アレルギー診断ガイドラインで扱われるようになりました。食物アレルギーとは気づかれにくいFPIESについて解説いたします。
2025年6月15日
「木の実」アレルギーが増えている
木の実類(ナッツ類)のアレルギーを持つ子どもが近年、増えています。木の実類が菓子や惣菜に含まれていて、知らずに摂取したら重い症状を呈し、初めてアレルギーに気づいた、というケースを診る機会が時々あります。木の実類には、クルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、ペカン(ピーカン)ナッツ、カカオなどがあげられます。ピーナッツは木の実類ではなく土の中に実る豆類ですが、同様に扱われることが多いです。
2025年5月24日
チック、チック症への対応法
親御さんから、「うちの子はまばたきをよくします。目が痒いのでしょうか?」「咳払いが止まりません。喘息か何か、肺の病気があるのでしょうか?」などの心配事を相談される機会がしばしばあります。おそらくチックという症状です。チック、チック症について解説いたします。
2025年4月9日
麻疹の脅威を再認識する
麻疹の感染者が3月以来、急増しています。2025年4月2日時点で、全国で58人(神奈川県で7人)が報告され、昨年1年間の45人を早くも超えました。年齢別では20〜30代に多く、0〜1歳児も7人います。麻疹ワクチンをまだ接種していない0〜1歳児には免疫がなく、感染すると重症化しやすいため、経過が気がかりです。58人の過半は海外で感染したとみられていますが(ベトナムが最多)、渡航歴がなく接触歴がはっきりしないケースもあり、今後の流行拡大が懸念されます。
2025年4月2日
百日咳が増加中 〜 ワクチンの追加接種を 〜
国立感染症研究所は、2025年3月23日までの1週間で、全国の医療機関から458人の百日咳が報告されたとの速報値を発表しました。今年に入ってからの累積数は4100人で、昨年1年間の4054人をすでに超えています。神奈川県では、2025年3月17日の時点で136人の報告があり、昨年1年間の48人をすでに超えています。主に学齢期(5〜14歳)の子どもに発生しています。
2025年3月20日
鼻腔に噴霧するインフルエンザワクチン「フルミスト」 (7月21日 一部加筆)
鼻腔に噴霧するだけで済む(= 注射いらずの)インフルエンザワクチン「フルミスト」が2023年に日本で認可されました。当院は2024年から使用を開始しています。フルミストは2003年に米国で認可され、2011年に欧州でも認可されました。一時的な曲折(2009年に流行した新型インフルエンザに対して効果が劣ること)を経ましたが、その後に改良が進み、日本でもこのたび有効性と安全性が認められたわけです。今回は噴霧型ワクチンについて解説いたします。
2025年2月16日
小児科医の特性は「せっかち」?
ある小児科専門誌に「小児科医は概してせっかちである」という内容のエッセイが掲載されています。果たして自分が小児科医の特性にどれだけ適合するか、マルバツをつけてみました。
① じっとしておらず、絶えず動き回っている → マル
② 自分の話したいことを一気に話そうとする → マル
③ 相手の話がゆっくりだと、せかせかと相槌を打って話を急がせる → マル
④ 一度に二つ以上のことをしようとする → マル
⑤ ゆっくり休養したり数時間なにもしないでいたりすると罪悪感を覚える → マル
すべて二重丸でした。まったくお説のとおりです。
2025年1月12日
ヒトメタニューモウイルス感染症
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)による感染症が中国で拡大していると報じられています。中国では今月末に春節(旧正月)に伴う人々の大移動があることから、日本など周辺国への影響が懸念されます。中国発ときくと新型コロナウイルスの再来!?と心配される向きもありますが、決してそうではありません。今回のコラムはhMPVについて解説いたします。