木の実類(ナッツ類)のアレルギーを持つ子どもが近年、増えています。木の実類が菓子や惣菜に含まれていて、知らずに摂取したら重い症状を呈し、初めてアレルギーに気づいた、というケースを診る機会が時々あります。木の実類には、クルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、ペカン(ピーカン)ナッツ、カカオなどがあげられます。ピーナッツは木の実類ではなく土の中に実る豆類ですが、同様に扱われることが多いです。
消費者庁が2023年に行った健康被害に関する全国実態調査で、木の実類は24.6%を占め、鶏卵の26.7%に次いで2番目の多さでした。木の実類の内訳は、クルミ(15.2%)、カシューナッツ(4.6%)、マカダミアナッツ(1.1%)、ピスタチオ(0.8%)、アーモンド(0.8%)、ペカンナッツ(0.6%)、ヘーゼルナッツ(0.4%)、ココナッツ(0.1%)の順です。ちなみに3位は牛乳(13.4%)、4位は小麦(8.1%)、5位はピーナッツ(7%)、6位は魚卵(5%)でした。2014年の調査で木の実類はわずか3%でしたので、この10年間のうちに急増したことがうかがえます。木の実類の使用量・消費量が増えたこととアレルギーの増加には関連があると思われます。木の実類は子どもの食べ物(ケーキ、クッキー、ドーナツ、グラノーラ、チョコレートなど)にしばしば含まれています。
木の実類やピーナッツは誤嚥性肺炎の恐れがあることから、咀嚼力が身に付く5歳までは固形のままでの摂取は控えるべきです。しかしペーストや粉末など誤嚥の心配がない形状であれば、早い時期から食べさせることができます。子どもにアレルギー体質がみられない場合、体調の良い時に少量から慎重に始めてみましょう。与え方は他の食べ物と変わりません。心配し過ぎて無闇に摂取を遅らせることは得策ではありません。食べる時期を遅らせても食物アレルギーの防止にならないことは証明済みの事実です。木の実類やピーナッツの早期摂取の安全性に関して、国立成育医療研究センターの研究報告が参考になります(https://www.ncchd.go.jp/press/2024/0613.pdf)。
もしもアレルギー体質がある場合、特に食物アレルギーの既往がある場合、かかりつけ医に相談してから始めましょう。血液検査でアレルギーの疑いがあることが判明した場合、病院で経口食物負荷試験を受けて確実に診断してもらうとよいでしょう。血液検査はアレルギーを確認するための手段の一つですが、偽陽性や偽陰性があるため必ずしも万能ではありません。実際に食べてみて症状が現れるか否かが、診断の一番の根拠になります。また、1種類の木の実にアレルギーがあるからといって、すべての木の実類を一律に禁止する必要はありません。個別に症状の有無を確認することが肝心です。ただし、カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンナッツの間には強い交差抗原性があるため、どちらかにアレルギーがあれば両者を禁止します。
木の実類にアレルギーがある場合、原材料の表示を確認する習慣を身につけましょう。食品表示法で、アレルギーを起こす可能性の高い8品目の表示が義務づけられています(エビ、カニ、クルミ、小麦、蕎麦、卵、乳、ピーナッツ)。また、アレルギーの起こす可能性のある20品目の表示が推奨されています(アーモンド、アワビ、イカ、イクラ、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ゴマ、鮭、鯖、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、桃、山芋、リンゴ、ゼラチン)。2025年以降、カシューナッツが表示義務、ピスタチオが表示推奨の対象になる見通しです。
食物アレルギーに対しては、適切に警戒するとともに、過剰な表現や誤った情報に振り回されない冷静さを併せ持ちたいと思います。不安があったりアレルギー症状が気になったりしたら、かかりつけ医に相談することをお勧めいたします。