2020年3月8日

新型コロナウイルス感染症への対応(第6報)

 感染経路が特定できない新型コロナウイルスの事例が各地で報告されています。流行状況は水際対策期を過ぎて感染蔓延期の入口に差しかかりました。さいわい大規模な感染拡大が認められる地域はなく、封じ込め対策の効果はまだ期待できます。北海道など感染拡大地域のデータ解析から明らかになったことは、症状の軽い人が気づかないうちに感染を拡大させている可能性が高いこと。なかでも若年者は重症化する割合が低く、活動範囲が広く、結果として重症化しやすい中高年層にまで感染を広げています。封じ込め対策による日常生活への影響は甚大ですが、北海道ではその効果が現れつつあり、感染者の増加のスピードが鈍っています。もうしばらくの我慢かと思います。その他、新型コロナウイルスについて現時点で判明していることをまとめました。

 ① 病初期には風邪との区別がつかない。感染から数日間(1〜12.5日)の潜伏期を経て、発熱、呼吸器症状(咳、咽頭痛、鼻汁)などが現れる。症状が約7日間と長く続くこと、発熱の程度に比して倦怠感が強いことが特徴。80%は風邪のまま自然に治癒する。20%は肺炎を合併するが、多くは回復する。高齢者(特に70歳以上)や基礎疾患保有者は重篤化する危険度が高い(6%)ので要警戒。感染しても発症しない無症状者が相当数いると推測される。

 ② 感染者の80%は他人に感染させない。一部の感染者が強い感染性を持つ(スーパー・スプレッダーと呼ばれる)。密閉された空間で長時間を共有すると、スーパー・スプレッダーからの感染が一気に拡大する(その空間内の患者集団はクラスターと呼ばれる)。密閉空間の長時間の共有を避けることが感染予防に有効。

 ③ 接触感染、飛沫感染で広がる。空気感染はない。予防には手洗いが最も重要。マスクで感染を予防できるか否か見解は分かれるが、満員電車など人混みの中では着用する方が安全。ただし通常のマスクはウイルスを容易に通過させるため、過信は禁物。汚染された手指を口や鼻に入れずに済む点では有用。マスクは感染拡大防止には有効で、咳やくしゃみをしている人は必ず着用すべき。咳エチケットの徹底を。

 ④ 感染の有無を調べるPCR検査が保険適用になった。感染防護体制の整った全国約860の専門外来病院で実施が可能。受診と検査の適否は帰国者・接触者相談センターの判断による。まずはセンターに電話を。現時点で、軽い風邪症状にとどまる人への検査は、感染者との接触歴や流行地への渡航歴がなければ、推奨されない。理由は、検査を希望する外来受診者が急増すると、病院内で濃厚接触が起こりうること、病院機能がパンクする恐れがあること。また、PCR検査の感度は高くないので(70%前後?)、陰性だから感染していないと言い切れない点に注意。

 ⑤ 風邪症状がある時、「確率は低いが、新型コロナウイルスに感染しているかもしれない」と冷静に自覚しておくこと。ほとんどの場合、軽い風邪症状で治る。特別な治療薬はないので、しっかり休養して体力を温存することが大切。もしも症状が4日以上続くか経過中に呼吸が苦しくなったら、肺炎など重症化の心配があるので、帰国者・接触者相談センターに相談する。基礎疾患(免疫不全、呼吸器疾患など)を持つ人は、症状が2日以上続けば相談する。その上で感染専門病院へ。実際には、風邪の原因のほとんどは新型コロナウイルス以外なので、過剰に意識する必要はない。早めの受診を希望する人は、信頼できるかかりつけ医に相談を。もう一つ大切なことは、症状が軽くても他人に感染させる危険があるため、外出を控える。少しでも「風邪かな?」と感じたら、無理せず自宅安静を。

 ⑥ 特別な治療薬やワクチンに過度の期待をかけない。開発と実用化には相当の時間がかかる。まずは予防が大切。

 ⑦ 不確かな情報に踊らされないこと。マスクやトイレットペーパーの買い占めは、結果的に品不足を招いて自分の首をしめることになる。必要な分だけ購入しよう。「新型コロナウイルスに効く」と謳う食品や健康グッズはすべて怪しい。騙されないように。非常時に最も警戒すべきことは、デマと風評とそれに乗せられる大衆心理。冷静沈着な行動を心がけたい。